強く肘を痛めたことのある方なら、 肘関節脱臼 がいつ自分の身にも起こるかわからないという危機感を持つことができるのではないでしょうか。どんなに気をつけていても脱臼するかしないかはほんの紙一重というところで、私たちは生活しているのです。
脱臼かどうか直ちに判断できるようになると便利です。
うっかり肘関節脱臼したときの心がまえ
ひねっただけ?はずれた?
肘関節がどの部分か念のため確認しますと、腕の曲がるところです。上腕骨と2本の前腕骨[橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)]で形成されています。曲げ伸ばしができるのは、上腕骨内部の滑車(かっしゃ)とよばれる部分と尺骨の肘頭と鍵型の部分が絡み合うように動かせるからです。
この部分がはずれることを肘関節脱臼といい、肘関節の屈伸ができなくなります。尺骨が上腕骨に対して前側に脱臼することを前方脱臼とよび、交通事故に多い症状です。最善の治療を施しても、後遺障害として肘の可動域制限や肘部の疼痛が残ることもあります。
反対に尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼することを後方脱臼とよび、ほとんどの場合こちらを発症します。また病院に行くと、外側の橈骨頭のみがはずれている場合は橈骨頭脱臼とよびますが、素人の患者にはどちらにしても痛いことに変わりはありません。
一瞬のことで因果関なし?
新体操のようなことをしなくても、転倒したときに手をついて起こるなどがほとんどです。脱臼しやすい年代は10代から中年の大人です。この年代で外で転倒するというのは、なかなか恥ずかしいものがあります。
子どもの頃に外でよく遊び、正しい歩き方、正しい走り方、そして正しい転び方を身につけておくことが最大の予防法です。外遊びをあまりせず、転んでもとっさに手をつくことができずに顔面を強打するケースがありますので、命を守るためにある意味では勉強よりも大切です。
骨や関節がというよりからだ全体が不安定な乳幼児やご高齢の方々は、同様の外力にさらされると骨折します。骨折なしの脱臼になることは珍しいです。
脱臼したそのときは、骨が飛び出しているのがご自身でもわかるはずですが、徐々に腫れが大きくなり飛び出している部分がわかりにくくなります。
こうなってくると、脱臼ではなく強打して腫れているだけなのか、それなら湿布を貼って様子をみようと病院へ行くのを止めるかたもいらっしゃるでしょう。
脱臼と骨折の判別は医師でも目視や触視ではわからないことがあり、X線検査でようやくはっきりする場合もあります。何か動かしにくいな、くらいでも病院で診てもらうことをお勧めします。
病院へ行かなくてもOK?
少しの勇気のある方であれば、ご自身で徒手整復を試みることも可能ですし、いつものことだから毎回自分で元に戻していらっしゃる運の良い方も少なくないでしょう。
理屈としては、①肘関節を軽く屈曲する。②前腕を後ろに押し下げながらけん引する。これで単純な脱臼は整復終了です。自信がないときは、応急処置をしなければ命に関わることではありませんから何もしないほうが良いです。
運が悪いと関節内に骨片が挟まっていたり、周りの靭帯や関節包が切れて骨折や神経の損傷を起こすケースもあります。下手なことをして治療費が上がってしまっては、相手が他人だと面倒なことになりかねません。
病院で整復してもらうと1週間ほどギプス固定をし、その後動かす承諾をもらいます。すぐに再脱臼を起こすようなケースでは、広範囲にわたる肘関節の靭帯損傷の可能性があります。
もう一度3週間前後のギプス固定を行って回復を目指しますが、手術で靭帯の縫合が必要になる症例もあります。マンガのようにご自分で治してしまう方もなかにはいらっしゃいますが、決して軽い怪我ではないことを覚えておいてください。
まとめ
うっかり肘関節脱臼したときの心がまえ
ひねっただけ?はずれた?
一瞬のことで因果関係なし?
病院に行かなくてもOK?