小さいお子さんが急に泣き出して腕がダランとしていたら、脱臼したかと察する方が多いことでしょう。すぐに病院へ行けば問題はありませんが、脱臼と似て非なるものに 肘内障 (ちゅうないしょう)というものもございます。
しばらく放置するとどちらも成長に悪い影響が出てきますし、日常的な予防意識を高めることも大切です。
子どもに多い肘内障。保護者にできることとは?
肘を痛がり泣き出したときには
小さいお子さんの場合、「肘」という言葉を知らないことも多いでしょうから、「腕が痛い」と突如烈火のごとく泣き出すことがあります。そこでよく観察すると、肘を曲げられなくなっています。
お子さんによっては上肢全体が麻痺しているようにみえたり、全く動かなくなってしまいます。けいれんでも起こしたのかと心配になるかもしれませんが、命に関わることはありません。発症するのは2~6才に多く、性差、左右差はみられません。
お子さんが単独で動き回って発症することよりも、親兄弟などに手を引っ張られて生じるケースが多いようです。引っ張ってほしくて引っ張られたときではなく、そっぽを向いていたりどこかへ行ってしまいそうなときに思わず引っ張ってひきとめるようなときです。
腕を垂らして曲げようとせず、腕をとってみようとすると嫌がって泣き方がヒートアップします。腫れたり熱感がある、発赤などはみられません。脱臼は関節が骨から完全に外れている状態ですが、肘内障は脱臼とは異なり少しずれているだけです。
橈骨頭(とうこつとう)という部分に亜脱臼が一時的に起こっています。したがって脱臼よりも比較的容易にもとの位置に戻すことができます。
子どもから目を離さない
忙しいときにお子さんが元気に泣いていると「静かにしなさい」といって目を向けないこともあります。しかし姿形をみていないことには異変には気づくことができません。
肘内障のチェックポイントは①突然、いつもより激しく泣き出した。②腕をダランとさせて、前腕を内側にして動かそうとしない。③肘の部分には内出血や赤みなどはない、などがわかりやすいのですが脱臼か肘内障かは素人には判断できないのが一般的です。
周囲の気をひくために泣いているのであれば、そのうち泣きつかれて寝てしまったりしますが脱臼や肘内障を発症しているとちょっとやそっとでは泣き止むことはないでしょう。
肘内障の多い年齢のお子さんは泣くのが仕事です。生命の危機を訴える手段です。かまいすぎると泣きグセがついて良くないという考え方ももちろん必要ですが、泣いているのに見向きもしないのは危険です。泣き出したら1度は全身をよくみると良いでしょう。
治療はすぐに終了
病院は小児科や整形外科で、徒手整復(としゅせいふく)とよばれる方法で治療します。その方法はシンプルで、素手で亜脱臼になっている部分を元の位置に戻すというものです。
これなら親でも頑張れば治せるのではないかと思われるかもしれませんが、決して無茶なことはせず安静に病院へ向かってください。関節が元に戻るとその途端にお子さんは手を動かせるようになります。
整復直後は再発しやすいですから、しばらくは手や腕を引っ張ることは控えましょう。そもそもお子さんの身体はどこもかしこも成長途中ですから、引っ張って誘導したりいうことを聞かせようとしたりするのは、緊急時以外は控えたほうが賢明です。
上にきょうだいがいる場合は、そのお子さん方にもよくいい聞かせて協力してもらえるようにしましょう。1度発症すると再発しやすくなっているのです。ところで肘内障と思っていても骨折のこともあります。
お子さんは骨がやわらかいので、レントゲンを撮影して初めて骨折が判明することもあります。ちょっと転倒しただけでも折れてしまったり、小さいお子さんのケガの予防は限界があります。
できればおとなしくしていてほしいと、つい思ってしまいがちですがふだんあまりにも過保護にしているといざというときの自己防衛力が身につきません。
上手な転び方などは子どものうちに身につけておかないと大きくなってからはなかなか練習もできません。ほどよくケガをしながら成長を見守るのが理想です。
まとめ
子どもに多い肘内障。保護者にできることとは?
肘を痛がり泣き出したときは
子どもから目を離さない
治療はすぐに終了