肘内障(ちゅうないしょう)とは、乳幼児に多い肘関節の亜脱臼のことを言います。完全な脱臼とは違い、軽度の関節の損傷ですので、方法さえ知っておけば、その場ですぐに整復治療ができます。
肘内障 の症状と 治療 法、完全脱臼との違いとあわせてご案内します。
肘内障(ちゅうないしょう)って何?その症状と治療法
幼児に多い肘内障
肘内障とは、2歳から4歳くらいのまだ関節がゆるくしっかりと固定されていない状態の幼児に見られる症状です。ひじ関節の頭が抜けたり、ずれたりした場合を言います。脱臼と似ていますが、完全に外れているわけではなく、亜脱臼の状態であるといえます。
正式な診断名は橈骨頭亜脱臼(とうこつとうあだっきゅう)と言います。乳幼児期は、ひじ関節にある橈骨(とうこつ)という骨の先端部分の形状が未発達で不完全なために、橈骨輪状靭帯から抜けやすいのです。
そのため、不意に子供の腕を引っ張ったり、転んだり、あるいは寝返りをうつだけでも発症する可能性があります。肘内障は、関節形成が未発達な時期に限られて発症します。7歳を越えても同じような症状があったとしたら、別の原因も考えられます。速やかに医師の診断を仰ぎましょう。
完全脱臼と肘内障との違い
肘内障は完全脱臼とは違います。診断名は橈骨頭亜脱臼と言い、完全に外れているわけではありません。関節は、関節包という繊維で覆われており、その上を内側側副靭帯や外則側副靭帯、さらに橈骨輪状靭帯などによって補強されています。
完全脱臼の場合には、橈骨の先端が関節包を突き破り、完全に抜けた状態になります。そのため肘から先がだらりと伸びて下垂し、曲げることができなくなります。
少しでも動かそうとすると肘の外側を中心に強い痛みが生じます。この痛みは放散痛となり、首や肩まで影響をおよぼすこともあります。
肘内障の場合には、橈骨の先端が関節包を突き破るようなことはなく、その上の橈骨輪状靭帯に支えられているところから少しずれた状態になっているだけです。肘内障は、関節脱臼の中でもかなり症状の軽いほうであると言えます。
整復、治療上の注意
肘内障の治療は、外れてしまった橈骨輪状靭帯の中に、橈骨の先端を戻すだけのことです。元の位置に収まった関節は、痛みもなくなり、何事もなかったように動かせるようになります。この、外れてしまった橈骨頭を元の位置に戻すということについて、ひととおりの注意点を説明いたします。
肘内障の患者がお子さんであるという前提でお話させていただきます。まずはお子さんのひじを真っ直ぐに伸ばし、片方の手でひじを動かないように固定します。もう一方の手は、お子さんの手のひらを握ります。このとき、手のひらは下を向けさせておきます。
この状態からゆっくりとそして強制的にひじを曲げさせながら、手のひらを上へ回していきます。途中、コツッ!とした手ごたえを感じます。その後痛みもなく、自由に曲げ伸ばしができるようになっていれば、整復は成功したと言えます。
いつまでも痛みを引きずっていたり、動作が不十分に感じるようでしたら、早々に医師へ相談しましょう。
整復後の心得と予防法
完全に整復されていれば、何事もなかったように肘は動かせるようになりますし、痛みもなくなります。しかしながら整復完了後も痛みを感じていたり、肘の動きが不十分な場合には、きちんと整復されていない可能性があります。
また肘内障ではなく、骨折ということも考えられます。曖昧な状態で様子を観るということなどせずに、速やかに専門医へ相談して下さい。わずかな時間であっても、お子さんのその後の成長に大きな影響を与えかねません。
お子さんの手を引くときには、手首を持たずに、指、あるいは手のひらを握りましょう。そうすることで肘への負担をやわらげることができます。
また一度肘内障をわずらうと、クセになる方が多いと言われています。人によっては、肘内障の発症した側の肩が下がり、骨格のバランスがくずれてしまう方もおります。
このようなケースでは、肘内障だけでなくさまざまな疾患を引き起こす可能性もあります。注意深い観察と、医師への定期的な相談も必要になります。
まとめ
肘内障(ちゅうないしょう)って何?その症状と治療法
幼児に多い肘内障
完全脱臼と肘内障との違い
整復、治療上の注意
整復後の心得と予防法