今まで元気だったご家族が病気やケガをすると、身内や周囲の人々の生活も一変することがあります。なかでも、長期入院するような状態ではないが自宅に戻ると本人も家族も大変そうな場合は絶望的な気持ちになることもあるでしょう。
大腿骨頚部骨折 という重傷を負った場合も、 看護 の苦労を想像しすぎて悲嘆に暮れてしまうご家族がいらっしゃいますが、心配しすぎは回復の遅れにもつながります。
家族が大腿骨頚部骨折をしたときの看護の心得
元気な女性が骨折すると家族は大変
大腿骨頚部骨折はご高齢の女性に多いため、たとえば夫婦二人暮らしで妻が家事を一通りこなしているようなご家庭で突如、妻が動けなくなり入院となると夫は困ることになります。
骨折の原因は交通事故や転倒よりも、骨粗しょう症によって弱っていた骨が何らかの軽い衝撃で折れるというケースが多いようです。骨粗しょう症は女性に多いことで広く知られていますから、したがって骨折も男女比1:4くらいの割合になるのです。
もともと元気な方でも大変ですが、寝たきりの状態の方がとなるとさらに大変です。ずっと同じ姿勢で安静にしていればそれで良いではないかと早合点する方がいらっしゃいますが、それでは骨折も体調も悪化します。
寝たきりでかつ骨折の治療中の方の体勢を整えるというのはとても繊細な重労働なのです。
いちばん大変なのは本人
ご高齢者の体調、体力というのは個人差が大きく、良くも悪くも昨日と今日ではまるで別人ということも珍しくありません。大腿骨頚部骨折をしても必ず治して元の生活をするという強い意志を持ち続けるには、ご家族との良好な関係があるかどうかで大きく異なってきます。
たとえば、手術後の予後の良い女性の患者さんでは3日目に車椅子に乗り始め、5日目には歩行器での歩行を開始するケースもみられます。
夫や家族が毎日お見舞いに来てリハビリを見守ったり、一緒に歩行練習をしたりという恵まれた環境が回復を後押ししていることは疑いの余地がありません。
毎日がむずかしくても、必ず何曜日に来てくれるとわかっていればその日までにここまでできるようになろうと目標を立てて頑張ることができます。決してため息まじりでもう限界だ、というような疲れた顔で面会に行ってはなりません。
高齢になれば誰もが思い通りにからだを動かせなくなるものなのです。看護というのは流れ作業ではなく、心のケアも含まれます。それも病院のスタッフの仕事ではないか、などと考えているのであればご自身の身に置き換えてどうしてもらいたいか想像してみてはいかがでしょうか。
遠慮せずに助けを求める
予後の良い方のなかには、3週間あまりで退院されるケースもあります。杖が必要だったり、足が上がらないのでバリアフリーに改築する必要がある場合もあります。
しかし、急にそういわれても経済状況によっては無い袖は振れませんし、本人に我慢を強いることは避けられません。転ばないように同じ部屋にこもるようになっては体調も悪化しますので、訪問看護やデイケアなどの福祉サービスを存分に活用しましょう。
介護保険を生活保護と同等のものと勘違いし、絶対に使いたくないというご年配の方が少なからずいらっしゃいますが、保険料を払って必要なときに利用できるものだときちんと説明して納得してもらってください。
残念ながら以前のように動けなくなってしまった場合、ご家族だけで何とかしようと頑張る必要はありません。共倒れになってしまいます。
寝たきりでなくとも、毎日一日中同じ部屋で過ごしていると認知能力が低下しますし、鬱のような症状も発症しやすくなります。デイケアでご家族以外の方と過ごすことはお互いにとって良い効果をもたらします。
まとめ
家族が大腿骨骨折をしたときの看護の心得
元気な女性が骨折すると家族は大変
いちばん大変なのは本人
遠慮せずに助けを求める