大腿骨転子部 の 骨折 は、同類の怪我としてあげられている大腿骨頚部骨折と比べると、非常に治癒しやすい怪我といわれています。ただし、一度骨折してしまうと、新たなリスクが生まれるともいわれています。
怪我の治療はもちろん、その新しいリスクとは何なのかをご紹介します。
大腿骨転子部の骨折には新たなリスクがある!?
大腿骨転子部骨折とは?
大腿骨転子部とは、股関節から太ももの骨にかけてある骨のなかで一番太くでっぱっている部分を指します。この転子部を骨折することを大腿骨転子部骨折とよびます。
高齢者に多い怪我である転子部骨折
高齢者の場合には、若いころと比べて骨が弱くなっています。骨が弱っているため、転倒などの軽い衝撃でも骨折を起こしてしまうのです。
骨粗しょう症がひどい場合では、転倒の衝撃が起きる前に転子部が骨折してしまい、転倒にいたるといったこともあるといわれています。
また、もともと寝たきりの状態の方は、骨の骨粗しょう症が進んでしまっているため、おむつ替えをする際のほんのわずかな衝撃でさえも骨折をもたらしてしまうといわれています。
骨粗しょう症は、男性よりも女性に多くみられます。このことから、大腿骨転子部骨折も女性におこりやすく、男女比でいうと男性が1割に対し、女性は4割の確率でおきるため、特に高齢女性の方は注意が必要です。
大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折の違い
大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折は部位が近い場所でおこりますが、怪我の治療方法や予後に違いがあります。これは解剖学的な形状の違いが原因となっています。
大腿骨頚部は関節を覆っている関節包の内側に存在しています。これに対して転子部は関節包の外側に存在しています。
骨の外側には外骨膜といった骨の癒合に重要な役割をする膜に覆われているのですが、大腿骨頚部は関節包に包まれているため、この外骨膜が存在していません。そのため、骨折した場合、骨が非常に癒合しにくくなっています。
これに比べて、大腿骨転子部の場合は周りが血流豊富な筋肉などに囲まれているため、骨が癒合しやすく、偽関節になる可能性が少なくなります。ただし、折れ方によっては偽関節になりやすくなることや、骨が壊死する可能性もあるため、注意が必要です。
大腿骨転子部骨折に対する治療法
一般的に多く用いられている治療法は、“骨接合術”です。これは骨折によってずれてしまった骨をもとの場所に整復し金属の留め具で固定する方法です。これは大腿骨転子部が骨癒合しやすいといった特徴を生かしているのです。
怪我の予後は?
大腿骨転子部骨折の予後として生命予後と機能予後の2つがあげられています。まず生命予後についてです。大腿骨転子部骨折の手術後、死亡例はおよそ10%だといわれています。
これは術後寝たきりの状態の間に体力が落ち、肺炎や感染症などの病気にかかる確率が高くなり、死亡にいたるといったケースがあげられています。
機能予後としては、術後早期から歩行訓練などがおこなわれます。機能の回復は受傷前により歩けていた人ほど早いといわれています。
ただし、術後半年から1年の間で受傷前と同様の歩行ができる人は全体の50%ほどであるといった報告もあるため、全員が早期に必ず元通りに歩くことができるわけではないことを知っておくことも必要です。
骨折を経験すると新しいリスクが生まれる!?
大腿骨転子部骨折を経験された方は、反対側の骨折がおきる可能性が高くなるといわれています。骨折した側には骨粗しょう症のための治療や、転倒を防止するための運動療法がおこなわれます。
運動療法の場合は、両側の脚にアプローチされるのですが、骨粗しょう症のための治療は反対側の骨に対してはどの程度効果があるかどうかが確立されていない状況です。
そのため、怪我をした側の骨のみ強化されてしまい、反対の脚の骨は骨粗しょう症の状態が続くため骨折しやすくなってしまうといったリスクがあげられています。
まとめ
大腿骨転子部の骨折には新たなリスクがある!?
大腿骨転子部骨折とは?
高齢者に多い怪我である転子部骨折
大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折の違い
怪我の予後は?
骨折を経験すると新しいリスクが生まれる!?