「 炎症性粉瘤 」と聞いて具体的に症状のイメージの沸く方は少ないことでしょう。お肌が乾燥して粉がふいているような状態のことではありません。さほど深刻そうなイメージがしにくいかもしれませんが、手術を受けなくてはならないことも多い病気です。
日常習慣が原因になることも多いので、ある程度の予防が可能です。
炎症性粉瘤って何のこと?
アトピーではない
「粉瘤」というと皮ふの表面に何か出現するのかと思われるかもしれませんが、皮ふの下に袋状の構造物ができます。この袋の中に皮脂や古い角質などの老廃物がたまっていき、しこりとなる良性の腫瘍のことです。
特徴としては、袋状にもりあがったしこりの中心部に「へそ」と呼ばれる穴(開口部)ができることがあります。この部分から細菌が侵入して炎症を起こします。細菌が侵入しなければ、通常は痛みはありません。
侵入によって強い痛みや粉瘤の周りの皮ふが赤く腫れ上がったりという症状が出ます。やがて化膿が悪化すると粉瘤の袋の機能が損なわれ膿が溜まってますます腫れてきます。
この状態を「膿瘍(のうよう)」といい、とても強い痛みを発します。痛みに耐え切れずにこの段階で初めて病院へ駆け込むという方が多いようです。
原因は不要不急の負荷
この疾患はどなたにも起こりうる一種のお代謝障害です。したがって年齢に関係なく若者から高齢者までかかります。自己免疫疾患、思春期、更年期障害、甲状腺機能異常などによって免疫機能が低下してしまうと発症しやすくなります。
からだにとっては敢えて必要ではないような負荷、たとえばレーザー治療、脱毛、ニキビを潰した跡、ピアスの穴から、入れ墨などをした後にできやすくなります。これらはおしゃれや美容に人気のある行為ではありますが、洋服やヘアカラーなどと比べても皮ふへの負担が大きいものです。
周囲の人たちが皆問題ないからと自分も大丈夫と軽い気持ちで行うのは、それだけリスクも伴うものであることを忘れないでください。
また、高齢の方は免疫力が低下し皮ふも弱っていますので、お風呂で強く洗いすぎたり乾布摩擦をすることでかえって健康な上皮細胞まで剥離させることになってしまいます。そこに粉瘤ができやすくなりますので、健康法の習慣を見直す必要があります。
続けることも才能だ、とはいいますがからだに関しては日々変化していることを忘れずに、むずかしいことですが客観的に今の自分に合っている健康法なのか検討をするのを面倒くさがってはなりません。
手術すれば治る
現在のところ、手術によって粉瘤を摘出する以外の治療はありません。炎症が起きているなかで手術をすると取り残しが起こりやすく、また再発もしやすくなるためまず準備として、炎症がさほどひどくない場合は、抗生物質の内服薬を数日間服用して炎症を抑えます。
すでに膿がたまった状態では、抗生物質は効果がありませんので切開排膿を行います。これは皮ふを小さく切開して溜まった膿を出すというものです。このような事前の処置で炎症を抑えてから、少なくとも2ヶ月は経過してから手術を受けることになります。手術は外来にて行われます。
手術方法は「小切開摘出術(切除術)」とよばれるもので、へそ(粉瘤の中心)から皮ふをレモン状に切開します。そして粉瘤の袋を剥離しながら取り除きます。最後に皮ふを真っ直ぐ縫合して終了です。おおよそ15~30分ほどで開放されます。
予後が順調であれば、約1週間後に抜糸します。簡単といえば簡単ですが、痛みを覚えてから手術、抜糸までの時間や精神的な負担を考えると、発症しないように予防意識を高めることが何よりです。
手術が成功したからといって、今度からピアスの穴は自分でではなく病院で開けてもらおうなどと楽天家すぎるのも考えものです。
まとめ
炎症性粉瘤って何のこと?
アトピーではない
原因は不要不急の負荷
手術すれば治る