楽しい 飲酒 が行き過ぎた翌日、二日酔い の不快なお目覚めと「あっ痛た~っ」という頭痛にしばらく悩まされたという経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。米国の調査ではアルコールは就労時間の損失の5%に関与しているとの報告もあります(ハリソン内科学より)。
二日酔いによる頭痛などで、その日一日が辛くなったり、仕事がはかどらなくならないようにしなくてはなりませんよね。今日はアルコールの体内での処理の仕組みと二日酔いの原因などについてお話したいと思います。
二日酔いによる頭痛の原因と対策:処理しきれない程の大量飲酒
体内でのアルコールの処理について
お酒に含まれているアルコールは、主にエタノールと呼ばれるアルコールの一種です。エタノールは神経活動を低下させる物質(中枢神経系抑制物質)であり、薬理活性作用をもつれっきとした薬物です。
体内における物質の動きを「代謝」ということがあります。飲酒によって口から入ったお酒がどのように処理されるかを、エタノールの代謝ということで見ていきましょう。
口から入ったエタノールは、胃と小腸入口部分で大半が吸収されてしまいます。ですのでお酒を飲んでからアルコールの何らかの作用が現れるのが早い(数分)のは、飲んだ先から胃や小腸の入り口という口から近い場所で吸収されるからです。
胃の中に食物が入っていない場合(空腹時)には、吸収を妨害する物がないため、吸収が早まります。すきっ腹に飲むと回るのが早いというのはこのためです。また、炭酸化されたお酒(たとえば、ビールやシャンパン)の場合、エタノールの吸収率は増加します。
吸収され血中に入ったエタノールの2~10%が、肺、尿、汗から直接排泄されますが、ほとんどが肝臓で代謝を受けて「アセトアルデヒド」になります。アセトアルデヒドは、最近では「シックハウス症候群」の原因物質として、メディアでも広く報じられご存知の方も多いと思われますが、アセトアルデヒド自体に毒性があることが知られています。
アセトアルデヒドの毒性としては、短時間の毒性として、皮膚や眼に作用すると赤くなったり、痛みの原因になります。経口摂取によって下痢、めまい、吐き気や嘔吐といった症状の原因になることが知られています。
アセトアルデヒドは肝臓で処理され、最終的には酢酸(お酢)と水にまで分解され無毒化するのですが、この処理能力に大きな個人差があることがわかっています。この個人差がお酒の強さの差になっています。日本人は欧米人に比べて、この処理能力が低いと言われています。
肝臓で処理しきれなくなったアセトアルデヒドや処理の過程で生じる様々な物質の蓄積によって、二日酔いや悪酔いなどの飲酒後の様々な代謝障害が発現すると言われています。
二日酔い頭痛:遅延型アルコール誘発性頭痛とはこんな症状
国際頭痛学会・頭痛分類委員会による国際頭痛分類第2版によると、二日酔いの時に見られる頭痛は、遅延型アルコール誘発頭痛(二日酔い頭痛とも呼ばれる)として分類されています。
遅延型アルコール頭痛の症状は下記の通りです。飲酒後にこのような症状が見られたら二日酔いによる頭痛の可能性が高いと考えられます。
A項目のうちの少なくとも1項目とB項目、C項目、D項目を満たすこと。
A項目
①両側性(頭の両側で片方に偏らず)に痛みを感じる
②前頭側頭部(頭の前やサイド)に痛みを感じる
③拍動性(心臓の拍動に合わせてドキンドキン)に痛みを感じる
④体を動かすと痛みが強くなる
B項目:偏頭痛患者の場合は少量の飲酒、また非偏頭痛患者による大量の飲酒
C項目:血中アルコール濃度が低下したり、消失してから頭痛が出現した
D項目:頭痛は約72 時間(3日)以内に消失した
遅延型アルコール誘発性頭痛への対応は?
二日酔い頭痛を避けたいという人は、前日の大量飲酒を控えることです。また、アルコールは他の頭痛の増悪要因でもありますので、元々偏頭痛など何らかの頭痛が起きやすい方は、飲酒自体を避けた方がよろしいでしょう。
どうしても飲まなくてはならないときには、肝臓が処理しきれなくなるほどの飲酒は避けるべきです。お酒を飲んで陽気に楽しめる程度にとどめ、足元がおぼつかないなど運動機能に影響が生じるような酩酊状態になるまでの飲酒は避けましょう。
空腹時の飲酒は、身体へのエタノール負荷が通常よりも大きくなりますので、飲酒の機会のある時には予め軽食を取るなど胃の中を空にしないように心掛けたり、宴会の最中は飲酒よりも食べることを優先することを心掛けましょう。
二日酔い頭痛に対しては、前日の大量飲酒や飲酒時に健康な食事ができなかったり、嘔吐している場合があり、それによって血中の電解質バランスが崩れている可能性がありますので、アイソトニック飲料を摂取するのが効果的です。アルコールによる利尿作用が働き、水分が不足している場合がありそれが頭痛を強めている原因にもなりますので、十分な水分補給は必ず行ってください。
二日酔いの頭痛に対して市販の頭痛薬を服用される方がいらっしゃいますが、多くの市販薬は飲酒前後の服薬については禁じられています。それは、飲酒状態の方々に対する安全性が十分確認されていないからです。飲酒による頭痛に対しては、薬での対応ではなく、予防的な対応が重要です。どうしても我慢できない場合は、迷わず病院に行きましょう。
まとめ
二日酔いによる頭痛の原因と対策:処理しきれない程の大量飲酒
体内でのアルコールの処理について
二日酔い頭痛:遅延型アルコール誘発性頭痛とはこんな症状
遅延型アルコール誘発性頭痛への対応は?