偏頭痛は日常生活に支障の高い病気であり、偏頭痛を持つ患者の74%は偏頭痛により日常生活に何らかの支障を来しています。また世界保健機構(WHO)の報告でも、偏頭痛は健康寿命に影響がある病気の19位(女性は12位)にランクされています。
今回は、 片頭痛 の治療のため処方される 薬 についてご紹介します。
偏頭痛の治療薬
急性期治療薬
急性期治療の目標は、偏頭痛患者に対して確実かつ速やかに痛みを軽減させ、患者の機能を回復させることです。一般的にはアセトアミノフェン、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤、トリプタン系製剤、制吐剤が使われます。
偏頭痛発作が軽度~中等度の場合はアセトアミノフェンやNSAIDsの早期服用が推奨されます。中等度~重度の痛みや、軽度であっても過去に鎮痛剤の効果がなかった場合にはトリプタン系製剤が第一に推奨されます。
エルゴタミン製剤は発作回数が少なく、発作早期の使用で満足な結果が得られている場合や、トリプタン系製剤での効き目がよくない患者に使用されます。
また、制吐剤はいずれの薬と併用しても有用です。頭痛外来では、たいていの患者が市販の頭痛薬で効果がなかった後に受診するため、トリプタン系製剤が処方されることが多くみられます。
トリプタン系製剤(カッコ内:商品名)
トリプタン系製剤は偏頭痛治療の中心となる薬剤です。脳硬膜の血管壁にあるセロトニン受容体に作用して拡張した血管を収縮させ、三叉神経にあるセロトニン受容体にも作用して過敏になった三叉神経を鎮静・正常化させることによって炎症を抑制し、頭痛発作を軽減させます。
痛みの増強が比較的短時間で進行する場合には、効果発現が早いリザトリプタン(マクサルト)、発作持続時間が長く頭痛の再燃がみられる場合には、効果持続時間の長いナラトリプタン(アマージ)が使用されます。
外出中などの発作時には、水なしで服用できるゾルミトリプタン(ゾーミッグ)やリザトリプタン(マクサルト)の口腔内崩壊錠が便利です。
また、トリプタン系薬剤の効果が少ない患者や、痛みが強すぎて寝ているときに目が覚めるような症例では、スマトリプタン(イミグラン)の点鼻薬や自己注射薬も選択肢になります。
全てのトリプタン系製剤にいえることは、頭痛発作開始後できるだけ早いタイミングで服用することが大事であるということです。タイミングを逃すと鎮痛効果が低下することが知られています。
トリプタン系製剤の副作用としては、胸部・肩などの締め付け感、眠気・悪心などがあります。また心臓や脳の血管に異常がある人は服用できません。
アセトアミノフェン・NSAIDs
偏頭痛発作が軽度~中等度の場合に使用されます。アセトアミノフェンは優れた鎮痛薬であり、比較的安全に服用できる薬剤です。市販の薬剤にもたくさん含まれています。しかしながら急激に多量のアセトアミノフェンを服用すると、肝臓に機能障害が起こるおそれがあります。
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きを妨げて、痛みの増強に関係するプロスタグランジンという物質を作らせないようにします。しかし、プロスタグランジンは胃粘膜を保護する作用も持つため、NSAIDsによくみられる副作用のひとつに、胃痛や胸焼けがあります。
エルゴタミン製剤
トリプタン系製剤と同様に、セロトニン受容体に作用して強力な血管収縮作用を示します。悪心・嘔吐なとの副作用が高頻度に現れるため、今ではトリプタン系製剤を使用することが多く、エルゴタミン製剤の使用は減っています。
制吐薬
嘔吐中枢に作用して、吐き気を抑えます。急性期治療の薬剤と一緒によく使用されます。偏頭痛の症状の一つである吐き気と、発作治療薬の副作用である悪心の両方に効果を発揮します。
予防治療薬
偏頭痛の発作回数が一か月に2回~3回以上ある場合や、頭痛の程度がひどい場合または急性期治療が効かない場合、もしくは頭痛発作がでる時期が予想できる場合などは、予防治療を検討します。
予防治療薬にはカルシウム拮抗薬やベータブロッカー、三環系抗うつ薬や抗てんかん薬が使用されます。
まとめ
偏頭痛の治療薬
急性期治療薬
トリプタン系製剤
アセトアミノフェン・NSAIDs
エルゴタミン製剤
制吐薬
予防治療薬