風邪を引いても腰痛がしたりお腹が痛くなったりとからだのあちこちが痛くなることはあります。しかし、腰のあたりがものすごく痛むということはないのではないでしょうか。
加えて急に熱が出たけれど風邪の症状とは異なるような、というときは 化膿性脊椎炎 の可能性があります。風邪をこじらせて発症するものではありませんので、覚えておくとよいでしょう。
膿がたまるだけではない、化膿性脊椎炎
生活習慣病?
主として細菌が原因となり、化膿性脊髄炎の一つです。血流を介して背骨(脊椎)に細菌が感染し化膿させる病気です。40~50代の中年の方に多いとされています。ところが最近は、高齢者の発症も増加しています。
これは、肝硬変などの肝機能障害、糖尿病、悪性腫瘍、透析中、ステロイド剤使用などにより免疫力が低下し、感染しやすい状態を自ら招いているのです。腰椎や胸椎に発症することが多く、頚椎では比較的まれな病状です。高齢者は腰椎や胸椎から感染することが多いようです。
原因は、①検査(椎間板造影など)や脊椎手術後に発症することもあります。②ほかの感染症から感染して発症では、胆のう炎、婦人科疾患、膀胱炎などの泌尿器疾患などの感染が多くみられます。
これらの原因はある日突然つくられるものではなく、長年の不摂生な生活の積み重ねの賜物ですから、生活習慣を今からでも見直せば将来のリスクを下げることができます。
脊椎を病むということ
なかには、ふつうの腰痛と変わらない症状の方もいらっしゃいます。急性では、高熱が出て腰背部の激痛に襲われ、急に膿汁がたまります。慢性では、微熱(37度台)が出て軽い疼痛が治らずに疲れがたまることもあるでしょう。
風邪ではないという確信がほしいのであれば、病状のある脊椎をわざと押したり押してもらったり、叩いたり叩いてもらったりすると激しい疼痛を起こすのでそれでわかります。
しかし、このくらいの症状ではさほど心配することはないように思われるかもしれません。症状が進み次の段階では脊髄麻痺がみられます。脊髄の周囲に膿がたまったり、脊椎がつぶれたりすると脊髄が圧迫されるのはイメージできると思います。こうして脊髄麻痺を引き起こします。
脊髄が麻痺して痛みだけで済むわけがありません。知覚障害、運動障害、下肢のしびれなどの麻痺症状が出てきたら迷わずすぐに病院へ行きましょう。
待ち受ける治療は山あり谷あり
保存療法と手術療法があります。自由に選択できるわけではなく、最終的には医師が決定します。
保存療法は、安静と抗生物質の投与が基本です。原因菌を特定し、抗菌薬を投与します。抗生物質は点滴を約3週間投与し、続いて2~3ヶ月間は内服で継続します。必要に応じてベッド上安静とします。また安静のため、体幹ギプス固定、コルセットなどの体幹装具を装着します。
手術療法は、脊椎の変形・破壊が進行しているケース、膿が神経を圧迫して麻痺しているケース、保存療法で効果がみられないケースに適用されます。手術は、病巣を取り除き骨移植などが行われます。移植と聞いて深刻さがやっとわかってきた方もいらっしゃることでしょう。
できれば、風邪のような症状と腰痛の時点で病院へ行きたいところです。しかし風邪では内科に診てもらおうと考えるでしょうから、そこで整形外科を紹介してもらえるかは運次第のところがあります。
内科クリニックを受診したら、初期の症状で整形外科を勧められることはまずないと考えてよいでしょう。整形外科へ行き、手術は脊椎・脊髄外科専門医が執刀します。保存療法で済むのであればそれに越したことはありません。
ただの風邪と腰痛だったら家族にあきれられるなどとためらわずに、早めに病院へ行きましょう。
まとめ
膿がたまるだけではない、化膿性脊椎炎
生活習慣病?
脊椎が病むということ
待ち受ける治療は山あり谷あり