膝や肩の関節の治療が必要になり、 関節鏡 を使用した手術を医師から提案されることがあります。費用も入院日数も少なくて済むお得な術式に一見みえますが、新しいものに不安を感じる患者さんもいらっしゃることでしょう。どんなものなのかご紹介いたします。
関節鏡ってどんな鏡?治療の良し悪し
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最新の手術
胃の内視鏡手術をきいたことのある方は、関節鏡視下手術のイメージもしやすいと思います。関節鏡は内視鏡の一種です。
膝の場合は、膝関節の周囲に1cmくらいの傷口を少なくとも2~3ヶ所あけて関節鏡を挿入して膝関節内で手術を行うというものです。
この術式の最大の長所は、従来の切開手術と比較して関節を大きく切開せずに手術を行うために術後の痛みが少なく、回復も早く、早期の日常生活への復帰あるいはスポーツへの復帰が期待できる点です。
また傷口が小さく少ないのも魅力的です。いつもかすり傷だらけだし全く気にならないという方もいらっしゃるでしょうが、手術の傷痕がずっとあるというのは患者さんによってはとても大きなストレスになります。
特に膝関節は常に動いているのでクリームなどを使用して傷痕を隠すのもむずかしいため、傷口が小さいことは精神的には大きいことなのです。
関節鏡は変形性膝関節症など膝に関連するほとんどの治療に使用することができます。
関節リウマチに対する滑膜切除術、半月板切除・縫合術、前十字靭帯再建術、関節ねずみ摘出術、軟骨損傷に対する骨軟骨移植などの術式が確立されています。
また膝以外の関節に対しても関節鏡治療が広く普及しています。
患者は楽、医師は腕次第
関節を切開する従来の手術は切開した部分を表面的にしか状態をみることができませんが、関節鏡視下手術においては関節鏡を使用することで関節の中を観察することが可能です。
したがってどの部分がより損傷しているのかを正確に把握できるため、手術中のムダも少なくて済みますし術後の運動療法やリハビリも効率的に行うことができます。
問題はこの手術は高度な技術を必要とする点です。ご承知のとおり、医師免許を持っているからといって全員が同じ実力で経験豊富ではありません。
関節鏡視下手術を一度も経験していない医師がいきなり1人で執刀医になるのはあまりにも危険です。ですから、病院によって最初から切開手術を勧めてくることも考えられます。
そのときは、もう少し大きい病院へ足を運んで診察してもらいましょう。
関節の状態によってはもともと内視鏡が使用できないこともあります。医師とよく相談できない病院は止めておいたほうが良いかもしれません。
しかし大抵の医師はとても忙しいですし、良し悪しの基準も個人差があります。
100%理想的な医師はどこにも存在しないということも頭に入れておいたほうが冷静な話し合いができてご自身のためです。
リスクも運頼み
従来型でも最新式でも手術は常に命懸けです。
関節鏡視下手術は全身麻酔で痛みも少なく傷も少ないので、日帰りが一般的となっています。しかしそれも必ずできる保証はありません。
術後に細菌感染による合併症を起こす可能性もありますし、もともと動脈硬化などの持病をお持ちの患者さんは肺塞栓症や深部製動脈血栓症など重度の合併症を起こすことも考えられます。
軽い細菌感染であれば抗菌薬の服用で治せますが、持病があると日帰りはむずかしいかもしれないと手術前から心得ておきましょう。
そしていちばん心配なのが費用ですが、膝の関節鏡視下手術は健康保険が適用されて3割負担の場合は8万円ほどです。
最新のむずかしい手術というと高額なイメージがあるかもしれませんが、経済的です。この費用で問題なく手術が成功し日帰りできたら最高です。
膝の痛みは大幅に緩和されていることでしょうし、体力も消耗していません。
手術が成功するかどうかは術後までわかりませんし、医師にすすめられてリスクも承知できたのであれば手術を受けるのも良いですし、どうしても怖いのであれば手術以外の治療をするのも選択肢の一つです。
よほど緊急でない限り、今後の生活スタイルを想像してよく考える時間は十分あります。
まとめ
関節鏡ってどんな鏡?治療の良し悪し
最新の手術
患者さんは楽、医師は腕次第
リスクも運頼み