突然の 肩 の強烈な痛みで夜眠れない、そのような症状は肩関節の 石灰 沈着性腱板炎かもしれません。きっかけがなく、突然生じるこの疾患は肩関節の腱板に沈着した石灰によるものです。
肩関節石灰沈着性腱板炎の原因や症状、治療法を見ていきましょう。
肩の石灰化?眠れない痛みの原因とは
肩関節石灰沈着性腱板炎とは
肩が石灰化している、こう聞くとひどく恐ろしい響きに聞こえるかもしれません。 肩関節石灰沈着性腱板炎とは、肩の腱板と呼ばれる部分の変性を基として、この腱板部分に石灰が沈着する病態です。この沈着する石灰は“炭酸アパタイト”といわれており、人体のpHに近い環境で石灰化しやすいという特徴を持っています。
そもそも私たちの肩関節は構造上、とても不安定で常に脱臼のリスクを抱えています。この本来不安定である肩関節の安定性を補強してくれているのが、回旋筋腱板と呼ばれるいくつかの筋肉の集まりです。
具体的には肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋という4つの小さい筋肉が肩関節を囲むように付着しています。
この回旋筋腱板、いわゆる腱板の中でも、特に石灰化が生じやすいのが棘上筋腱になります。肩の運動によって、この棘上筋を使っているうちに、加齢などの微妙な腱の変化が相まって石灰が溜まってしまうのです。
この沈着した石灰が吸収されていく過程において、炎症反応が起こるために疼痛が生じるのです。
肩関節石灰沈着性腱板炎の症状
肩関節石灰沈着性腱板炎は40~50歳代の女性に特に多くみられるとされています。
では、具体的にどのような症状を招くのか見ていきましょう。
沈着した石灰の吸収過程で生じる炎症反応は、肩関節の腱内圧を高めます。この肩関節内の内圧が高められることで肩に強烈な痛みが生じ、場合によっては肩を動かすことも困難となることがあります。肩関節には腫脹や圧痛などの急性炎症所見をみとめます。
また、夜間に突発的に痛みが生じることも肩関節石灰沈着性腱板炎の症状の特徴であり、激痛によって夜間の睡眠障害を生じることも少なくありません。
症状の落ち着いた慢性期には、沈着した石灰によって腱板が肥厚します。この肥厚した腱板は、肩を動かす際に肩関節を構成する骨と衝突を起こし、動作時痛やインピンジメントを引き起こします。
肩関節石灰沈着性腱板炎の診断
肩関節石灰沈着性腱板炎の診断にはまず、圧痛の生じる部位や動きの障害を診ます。しかし、肩関節周囲炎、いわゆる五十肩などとよく似た症状を示すことから、最終的にはX線撮影によって診断を行います。
また、X線撮影で腱板相当部位に石灰沈着像をみとめると診断が行われますが、石灰沈着の大きさなどを調べるために超音波検査やCT検査が併用されることもあります。
肩関節石灰沈着性腱板炎の治療
症状は保存的に経過を診ていくことで軽快する場合が多いため、病院を受診せずに、治るまでそのままにしてしまう人もいます。
病院を受診しても基本が保存療法となることは変わりませんが、激痛を取り除くための処置が行われることになります。
急性期には、腱板部分に注射針を穿刺して石灰を吸入し、取り除いてから、副腎皮質ステロイド薬を注入します。吸入および副腎皮質ステロイド薬注入は非常に効果的で、除痛、関節可動域改善をもたらします。
また、薬物療法が石灰化の吸収を促進することも知られており、薬物治療を併用する場合もあります。
疼痛がとれた慢性期にも肩関節の可動域制限が残存している場合にはホットパックなどの温熱療法や運動療法などのリハビリテーションを進めていくことになります。
ほとんどの場合は保存療法にて軽快しますが、肥厚した腱板部分と骨との接触が強く、炎症が消失せずに痛みが続く場合には手術療法の適応となることもあります。
まとめ
肩の石灰化?眠れない痛みの原因とは
肩関節石灰沈着性腱板炎とは
肩関節石灰沈着性腱板炎の症状
肩関節石灰沈着性腱板炎の診断
肩関節石灰沈着性腱板炎の治療