皆さんの周りにも「股関節が悪いからスポーツはできない」とか、「一度脱臼したことがある」というような方がいらっしゃることでしょう。
大人 になると病気でも怪我でも治りが悪くなることが多いですが、 股関節 という一見取るに足らない部分を 脱臼 してしまうと穏やかでない日々が訪れます。明日は我が身と思って、ご一読ください。
大人になってから股関節を脱臼する原因とは?
大人ならではの原因
股関節の脱臼は、一般的には乳幼児とくに女の子の赤ちゃんに多い症状です。成長しきった大人が脱臼すると、からだが硬いぶん股関節に激しい痛みが起こります。
実際に脱臼してみないことにはイメージしにくいかもしれませんが、脱臼を起こした側の足は伸ばすことができなくなります。ひざを立てた状態で固定されてしまうためです。ちなみにそんな余裕はないかもしれませんが、脱臼していない側の正常な足と比べると明らかに短くみえます。
お察しのとおり、大人が股関節を脱臼するというのはよほど不自然な体勢をせざるを得なくなったときです。患者さんは「外傷性股関節脱臼」のケースが多く、その原因はスポーツ、転倒、転落、交通事故などで股関節が大きな外圧をさらされたときに発症します。
いちばん多いのはバイクによる事故ですが、自転車も同じくらい危険性があります。症状は、関節が動かせなくなるほかに当然ながら尋常でない激痛、しばらく経つと皮下出血、関節の腫脹が主だったものです。
したがっていつも慎重にオーバーなことをせずに生活していれば、ある程度は防ぐことができるといえるでしょう。
治療で治るケース
股関節の治療は内臓の手術よりもずっとむずかしいケースが多いのですが、諦めることはありません。
一つは、耳覚えのある方も多いであろう「人工股関節置き換え術」です。年齢的に治癒の見込みが少ない骨折や、骨の固定で整復が困難な骨折については人工関節が用いられます。人工関節も年々改良されて品質は良くなってきていますが、違和感が完全にないというレベルにはなっていないようです。
二つめは「徒手整復法」(医師が手で脱臼を治す術式)です。肘関節の脱臼とは異なり、入院することになります。全身麻酔が必要なことからも、麻酔が切れたときに相当の忍耐を強いられることが想像できます。
入院中に痛みがおさまることはまずありません。鎮痛薬としてロキソニン、ボルタレンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬を使用します。こんな大衆薬で大丈夫なのかと気を緩めてはならず、しっかり副作用があります。
長期間に渡り服薬すると胃腸の悪化、腎機能の低下といった症状が必ずではありませんが通常発生します。急性期を過ぎたら医師と相談し減量や休薬を検討しましょう。
三つめは「観血的整復固定術」です。脱臼骨折の場合には手術的な治療を受けることになります。そして怖いのは合併症です。
外傷性股関節脱臼の場合、「阻血性大腿骨頭壊死」があります。脱臼を24時間以内に整復しないと大腿骨頭の壊死が高い確率で発生します。壊死が広範囲であれば手術が必要です。
先天性の可能性もある
大人になって慢性的な股関節痛に悩まされ、初めて整形外科へ相談に訪れたところ「先天性の股関節脱臼があります」といわれるケースは珍しくありません。
先天性というよりも元々片側の歪みの大きい股関節に、ハイハイを始めた頃から今日まで過度のねじれ波や衝撃波が繰り返し負担をかけ続けたことによって、変形が進行して骨頭部分が摩擦してすり減った結果にとうとう耐え切れなくなった状態ともいえます。
またはご本人は記憶にないでしょうが赤ちゃんの頃の脱臼は治っていたものの、その後の生活で偏平足、外反母趾、指上げ足などによる股関節にやさしくない歩き方が習慣になってしまい再発することもあります。
歩き方というのは健康と深く関わりがありますから、赤ちゃんが「歩けるようになった」と喜んであとは野放しではなく、折々に足や歩き方を観察して本人にもそうするように教えておくのが理想的です。
まとめ
大人になってから股関節を脱臼する原因とは?
大人ならではの原因
治療で治るケース
先天性の可能性もある