体幹と両脚をつなぐ重要な関節である股関節。曲げ伸ばしのみを行う膝関節や肘関節と比べても、運動方向・範囲が広いことも特徴的な疾患です。この 股関節 の 痛み を引き起こす原因として考えられる疾患をまとめて、ご紹介します。
股関節の痛みの原因疾患とは
変形性股関節症
股関節の痛みを引き起こす原因として、代表的な疾患です。
股関節は、寛骨という骨盤側の骨と、大腿骨という太ももの骨が組み合わさってできています。股関節部分の大腿骨の先端は、大腿骨頭という球状の突出となっており、この大腿骨頭が、寛骨臼というお椀型の受け皿にすっぽりとはまりこむ形の構造となっています。
股関節は、このお椀型の寛骨臼の中で大腿骨頭が自由に動き回ることで、さまざまな運動を行っています。なおかつ、股関節は、骨盤より上の重さを左右の股関節部で支える役割も担っています。
変形性股関節症では、さまざまな原因によって、この体重を支えている股関節内の関節軟骨がすり減り、摩耗してしまっている病態です。関節軟骨がすり減ることで、歩行時や立位時、立ち上がり動作時など、体重をかけた際に痛みを引き起こします。
さらに、疾患が重度化すると、関節の動かすことができる範囲が狭くなったり、痛みのために歩くことが難しくなったりしてしまいます。
大腿骨頭壊死
股関節を作っている大腿骨の先端部分の大腿骨頭が壊死してしまう病態です。大腿骨頭が壊死することで、壊死した骨が体重の重みに耐えきれなくなって、圧壊してしまうことで股関節部の痛みを引き起こします。
大腿骨頭壊死は骨折などの外傷によって引き起こされる症候性大腿骨頭壊死というものと、発症メカニズムが明らかとなっていない特発性大腿骨頭壊死とがあります。
大腿骨は高齢者が非常に骨折しやすい部位であり、転倒時に大腿骨頸部という部分を骨折するケースがとても多いです。大腿骨頸部骨折は高齢者の4大骨折の1つとしても数えられています。
この、大腿骨頸部骨折が原因となって、大腿骨頭へと十分な栄養が行き渡らなくなることで大腿骨頭壊死が生じるのが、症候性大腿骨頭壊死で最も多いとされるパターンです。
一方、特発性大腿骨頭壊死は、その壊死に至る機序は明らかとなっていないものの、アルコールやステロイド薬との関連が深いことは知られています。この特発性大腿骨頭壊死は、厚生労働省が定める指定難病の1つでもあります。
臼蓋形成不全
臼蓋形成不全は、股関節を構成する骨盤側の骨である、寛骨臼の形が不十分となってしまう病態です。股関節を構成する寛骨臼の形が不十分ということは、大腿骨頭と接触して、体重を受けることができる面積が狭くなってしまうということになります。
そのため、股関節への負担が一部分に集中しやすく、変形性股関節症へと発展する危険性が高まります。
股関節唇損傷
寛骨臼の周辺を覆っている線維軟骨を股関節唇といい、受け皿である寛骨臼を深くすることで、股関節の適合性を高める役割を持っています。この股関節唇が損傷することで、運動時に痛みが生じたり、引っかかるような違和感を感じたりといった症状が現れます。
坐骨神経痛
股関節の後ろ側、臀部の痛みやしびれを引き起こす症状です。非常に多くの方が、頭を悩ませている症状であり、その名前をご存知の方も多いかと思います。
坐骨神経とは、臀部から足先にまで伸びている末梢神経の根元の名称であり、その範囲内の運動機能や感覚を司っています。
この坐骨神経が何らかの原因によって圧迫された状態が坐骨神経痛であり、股関節や臀部周囲の痛みだけでなく、脚先まで響くような痛みやしびれを伴うことが特徴です。
坐骨神経痛を引き起こす可能性がある疾患としては、主に腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群などが挙げられます。
まとめ
股関節の痛みの原因疾患とは
変形性股関節症
大腿骨頭壊死
臼蓋形成不全
股関節唇損傷
坐骨神経痛