股関節は立つ、 歩くなど重要な動作を行うための関節であり、障害がおこると日常生活において大きな影響が出てしまいます。その股関節が炎症を起こしている状態が 股関節炎 で、乳幼児や子供の発症が特に多い病気です。
発症の原因は明確には解明されていませんが、免疫力が関係していると考えられています。
原因不明の股関節痛をおこす「股関節炎」について
股関節と炎症
股関節は体の中で最も大きな関節で骨盤と大腿骨を繋いでいます。立つ、座る、歩くなどの動作の際に重要な役割を担い、体の安定性を保ちながら体重を支えています。股関節とその周囲の筋肉により体を前後左右に曲げたり、回したりと自由に動かすことができます。
炎症とは体が有害な刺激を受けた時に自分で治そうとする防御反応で、痛みや腫れ、熱を持つ、赤くなるなどの症状があらわれます。炎症が続くと膿がたまって組織が固くなり関節をスムーズに動かせなくなることもあります。
股関節炎の症状と原因
股関節炎は股関節や膝の痛みと発熱の症状があらわれることが多いです。大人でも発症することがありますが、子供や乳幼児での発症が多いです。
足を動かすと痛みを感じるため歩く時に無意識に足をひきずってしまいます。また乳幼児の場合は自分から動こうとしなくなり、足を動かすと痛みのために激しく泣くこともありあます。
原因ははっきりとは解明されていませんが、ウイルスの侵入や外傷に関係する免疫反応によるものと考えられています。よって免疫力の低い乳幼児や、大人でも抵抗力の弱くなっている人に発症しやすい傾向にあります。
症状が確認された場合はレントゲンやMRI、血液検査などで診断を行います。
子供に多い股関節痛「単純性股関節炎」について
単純性股関節炎は稀に大人でも発症しますが、多くは3歳~10歳位の小児期に発症する一過性の病気です。風邪を引いた後などの免疫力の弱まったタイミングで股関節や膝が痛みはじめ、足をひきずるといった歩行の支障みられます。
また股関節の可動域が狭くなるためにO脚になることもありますが、レントゲン検査では骨の異常は認められません。微熱程度の発熱の症状がでる場合もあります。
治療は痛みを抑える鎮痛剤と炎症を抑える抗生物質の投薬が中心ですが、何よりも股関節をあまり動かさずに安静にすることが大切です。単純性股関節炎は10日~2週間程度で自然と完治します。
乳幼児に多い危険な「化膿性股関節炎」について
化膿性股関節炎は股関節に細菌が侵入し炎症をおこした状態で、抵抗力の弱い乳幼児に多く見られる病気です。股関節の痛みと腫れ、38度以上の発熱の症状があらわれることが多いです。
乳幼児の場合は痛みを伝えることができないうえに股関節付近は脂肪も多いため、腫れを確認できずに診断が遅れることもあります。
足を自ら動かさない、足を動かすと痛がって泣く、股関節の可動域が狭いなどの症状がある場合は血液検査やMRI検査、関節穿刺と呼ばれる関節液を採取する検査で確定診断を行います。
治療は内視鏡により関節内部を抗生物質入りの生理食塩水で洗浄し膿を出すためのチューブを挿入します。抗生物質の静脈投与も行います。
関節内部の膿は自然に排出しづらいため、時間の経過とともに関節が破壊されてしまいます。また乳幼児が化膿性股関節炎に感染すると、骨や軟骨が未熟なため変形してしまうリスクもあります。後遺症が残る可能性もありますので、早期発見と治療が重要になります。
自己免疫疾患「リウマチ性股関節炎」について
リウマチ性股関節炎は関節リウマチにより股関節に炎症がおこる病気です。関節リウマチの根本的な原因は解明されていませんが、自己免疫が自身の関節を攻撃してしまい痛みや腫れを発症します。リウマチ性股関節炎を発症すると股関節の痛みで歩くことが難しくなります。
治療はまずは薬物療法を行います。以前は痛みの緩和のみでしたが、現在では痛みや腫れを抑えるとともに関節破壊の進行を止め、身体機能の障害を進行させない治療薬が使われています。
股関節の破壊が進み薬では痛みが解消されない場合は、必要以上に増えてしまった滑膜を取り除く滑膜切除術や人工股関節置換術などの手術療法を行います。
まとめ
原因不明の股関節痛をおこす「股関節炎」について
股関節と炎症
股関節炎の症状と原因
子供に多い股関節痛「単純性股関節炎」について
乳幼児に多い危険な「化膿性股関節炎」について
自己免疫疾患「リウマチ性股関節炎」について