股関節唇損傷 (こかんせつしんそんしょう)とは何か、と問われてスラスラと答えられる方は少ないことでしょう。股関節を痛めて手術が必要になったというご年配の身内や知り合いがいても、股関節唇を痛めたと周りに伝える方はかなり少数派でしょうから、一般への認知度は低めです。
珍しい症例ではありませんので、覚えておくと予防ができます。
股関節唇損傷って病気?かぶれ?
まじめな女性がなりやすい?
スポーツが好きな大人はもちろん、10代でも要注意です。40代の女性の発症がNO.1であることから、元々あるいはそろそろ健康を意識してからだを動かしてみようと実践に移す方が多いためと考えられます。股関節の位置を確認すると、骨盤と太ももの大腿骨をつないでいる関節です。
股関節唇は、薄い軟骨です。骨盤側のお椀状の骨のヘリに付いています。股関節を外側から包み込み、関節の動きをスムーズにしています。股関節唇がないと球状の骨が外れやすくなります。
このようにクッションの役割を果たしている股関節唇が、何かの拍子に切れたり裂けたりするのが股関節唇損傷です。股関節を包み込んで守っていたはずの股関節唇のかけらが、関節に入り込んで痛みを伴ったり、軟骨が炎症を起こしたりして脅威となります。
運動不足は不健康ですが、生真面目過ぎても取り返しのつかないことになります。健康に良いと一般的にいわれていることでも、ご自身にも良いとは限りません。自分にはどうなのか、面倒くさがらずに考えながら生活することが必要です。
自分のせいではない原因も
先天的な要因がある場合もあります。生まれつきのことは自身では何ともなりません。臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん。股関節のお椀状の部分が浅い)の方は、股関節唇にも負担がかかりやすく軟骨が削れやすいのです。
また、股関節インピンジメントというケースもあります。これは、足の骨に出っ張りのある方がなりやすい症状です。関節が動いたときに、股関節唇が挟まれやすい構造を持っています。
身内にどのような疾患を持っている人がいるか、体質なども含めて全てを把握しているご家庭は多くはないでしょうが、わかっていれば気をつけてスポーツを控えることもできます。
祖母は股関節の手術をしているけれど、両親は大丈夫だし私も大丈夫だろうと都合よく楽観視して何とかなるほど、からだは運良くはできていません。
治療とグレーな完治
手術をすれば一応治ったということにはなります。股関節鏡を使用した外科的治療は、傷口も小さく簡単です。ただし、癒着を起こすことがあります。内臓癒着ではありませんから生死に関わる事態になることは考えにくいですが、簡単だからこそむずかしいといえます。
人工関節置き換え手術は難易度が上がります。手術を受けて、安静にすれば完治したかというと曖昧なところです。実は股関節唇損傷は、すっかり元通りになったというのがはっきりわからないのです。
たとえば、医師がどうかなと思っていても患者さんがもうバッチリだと実感することもありますし、もちろんその逆もあるでしょう。リハビリも兼ねたストレッチも効果の判断がつきにくいのが現状です。
もし、ストレッチを根気よく続けていて股関節の痛みが解消あるいは軽減したとすれば、知らず知らず試行錯誤をして股関節唇に負担のかからないような動きを身につけることができた、と捉えるべきかもしれません。このようなグレーな面があるため、再発の可能性も大いにあります。
だからといって安静にし過ぎても、ぎこちない動作が身についてしまいます。歩き方がおかしくないか気にしすぎて、外出を控えるようなことにはならないでください。また、それほど重症でもないのに車椅子に甘んじるのも良いこととはいえません。
まとめ
股関節唇損傷って病気?かぶれ?
まじめな女性がなりやすい?
自分のせいではない原因も
治療とグレーな完治