みなさんは 後縦靭帯骨化症 と聞いてどの部分をイメージされるでしょうか。後ろを縦に走る靭帯だから背骨あたりかと見当をつけられれば上出来です。略してOPLLと呼びます。
中年以降の方が50才前後で発症することが多く、男女比は2:1と男性に多い病気です。働き盛りだから疲れのせいと決めつけずに、身に覚えがあれば直ちに病院へいきましょう。
後縦靭帯骨化症ってどの部分?
原因は複数。まれな病気
後縦靭帯骨化症とは、背骨の中を縦に走る靭帯が骨になることです。骨になると全体が窮屈になり圧迫されます。脊髄が収まっている脊柱管が狭くなり、脊髄はもちろんのこと、脊髄から枝分かれしている神経根が押されます。すると、運動障害や感覚障害などの神経症状が起こります。
骨化した脊椎の部位によって腰椎後縦靭帯骨化症、頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症と呼ばれています。糖尿病や肥満体の方に多いというと割と一般的な病気なのかと思いそうですが、日本の一般外来の成人患者で骨化が見つかる頻度は平均3%です。
また、レントゲンで骨化が確認されても症状が出るのはその中の一部の方です。原因は現在のところ特定されていませんが、これという単一の原因で生じる病気ではないことは解明されています。
遺伝、老化現象、性ホルモンの異常、糖尿病、肥満傾向、全身的な骨化傾向、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、骨化部位の局所ストレスやその部位の椎間板脱出などがあげられています。なかでも特に家族内発症が多いことから遺伝子の関連が大きいと考えられています。
日常生活への支障
症状は骨化部位によって異なります。腰椎に発症すると、歩くときに下肢のしびれや痛み、力が入らない(脱力感)などが出てきます。頚椎の場合は、初期には指先や首筋、肩甲骨の痛みやしびれがあらわれます。
次の段階に進むとしびれや痛みの範囲が広がります。感覚障害や足全体のしびれ、足がスムーズに動かない、手指の細かい作業が思うようにできなくなる運動障害が出てきます。
重度になると、立ったり歩くのがむずかしくなります。こうなると日常生活は一変します。トイレに一人で行くことができず、排泄障害もあるとほかのことを手伝ってもらうよりもはるかに精神的なショックは大きいことでしょう。胸椎では、体幹や下半身に症状が出ます。
重篤になると大変ですが、発症した全ての患者さんが順調に悪化するわけではありません。おおよそ半数以上の方々は数年経っても症状に変化がありません。ですが、原因が特定されていないだけに突然悪化することも十分認識して生活しなくてはなりません。
手術をしても治らない?
手術をしない場合は、保護治療となります。骨化を治すことではなく、骨化によって圧迫されている神経を保護することがメインテーマです。安静保持を維持するために外固定装具の装着がまず試されます。そのほか、薬物療法として消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの内服が検討されます。
軽度の症状はこれで十分効果が得られます。もちろん、体質や持病によっては服用できないこともあります。
重度のケースでは、手術を受けることになります。手術自体は特別むずかしいものではありません。気がかりなことは、手術によって症状が改善したとしても数年~10年程度の経過で再び同じ部位もしくは他の部位の骨化が大きくなり症状が出ることです。
したがって、一度この病気を発症したら生涯にわたって定期検査(画像検査)を受けることが勧められます。手術をして2年、3年と経つにつれて段々と危機意識が薄れて面倒くさくなったり、人によっては病気そのものを忘れてしまうこともあるでしょう。
遺伝だから気にしても仕方がない、なるようになると腹を括らずに、病院から定期検査のお知らせ葉書が届いたら行っておいたほうがよいでしょう。
まとめ
後縦靭帯骨化症ってどこの部分?
原因は複数。まれな病気
日常生活への支障
手術をしても治らない?