肩こりや腕・背中のしびれや脱力感を引き起こす疾患に、胸郭出口症候群というものがあります。一般的には聞き覚えのない名称かもしれません。
そんな 胸郭出口症候群 という疾患の病態や症状、治療方法についてご紹介します。
肩こりの原因?胸郭出口症候群とは
胸郭出口症候群の病態
胸郭出口症候群、聞き慣れない病名ですが、重度の肩こりや手先のしびれ、腕全体の脱力感を感じて病院を受診した際に、診断される可能性がある疾患です。
胸郭とは、人の胸の部分を取り囲む骨格のことです。具体的には、胸骨という胸の真正面にある骨と、脊柱の一部である12個の胸椎、そこから伸びる12対の肋骨から構成されている、籠状の骨格です。胸郭は、肺や心臓、食道などを取り囲む形で保護しており、さらにこの胸郭運動は呼吸運動の補助に欠かせないものになります。
胸郭出口とは、この胸郭の最上部である第一肋骨とその上部にある鎖骨との間にできた空間のことであり、腕神経叢という神経の集まりと鎖骨下動脈という太い動脈が通っています。
腕神経叢とは、第5頸神経から第8頸神経、第1胸神経が集まってできており、分岐を繰り返しながら首回りや背中、腕全体へと走行していく神経であり、背中や肩、腕などの広い範囲の感覚や筋肉の運動を司っています。
このような重要な神経や太い動脈が通っている胸郭出口部分は、前・中・後斜角筋や小胸筋といった筋肉が走行している部位でもあります。
胸郭出口症候群とは、この胸郭出口部分において腕神経叢や鎖骨下動脈が圧迫を受けている病態です。具体的には、その原因から、斜角筋症候群や肋鎖症候群、小胸筋症候群、頸肋症候群などが主なものとされ、これらをまとめて胸郭出口症候群と総称します。
胸郭出口症候群の症状
胸郭出口症候群では、腕神経叢や鎖骨下動脈が圧迫されることによる神経障害、血流障害によって首から肩、腕にかけてのしびれや痛みの症状を引き起こします。
具体的には、腕や指先のしびれ、そして熱感や冷感、脱力感などが初発症状として現れることが多いとされています。
また、次第に症状が首や肩、肩甲骨周囲へとひろがり、うずくような痛みとなって現れます。特に、洗濯物を干す際や、つり革につかまるときのように、腕を上に挙げる動作で、症状が出やすいのも特徴です。
さらに、腕の小指側に沿っての、うずくような激痛としびれ、ときには刺すような痛みを伴います。また、握力低下や字を書いたり、ボタンをとめたりといった細かい指先の動作が行いにくくなる運動障害が出現することもあります。
このような運動障害を伴う場合には、次第に手の筋肉が萎縮していき、手の甲の骨と骨との間がへこんでしまったり、手の平のボリュームがなくなっていったりします。また、鎖骨下動脈が圧迫を受け、腕の血行が悪くなっているときには、腕が白っぽくなっていきます。
胸郭出口症候群の治療
胸郭出口症候群に対する治療は、症状の悪化を防ぐための保存療法が主となります。特に、症状悪化を招くような腕を上に挙げた姿勢、重い物を持ち上げたりするような仕事や家事を避ける生活を心がけます。
また、リュックで重い物を担ぐことも避けた方が良いでしょう。加えて、症状が軽い場合には、肩回りの筋肉の筋力増強運動も行います。特に、僧帽筋や肩甲挙筋という筋肉を鍛えることで、なで肩を避け、少し肩を挙げた姿勢をとるようにします。
こうした生活習慣の工夫や筋力増強運動に加えて、消炎鎮痛剤や血流改善剤、ビタミンB1などを投与することでも症状の軽減を促します。
保存療法でも症状が改善しない場合や障害が非常に重度である場合には、それぞれの原因に合わせた手術療法が選択されることになります。
まとめ
肩こりの原因?胸郭出口症候群とは
胸郭出口症候群の病態
胸郭出口症候群の症状
胸郭出口症候群の治療