免疫チェックポイント阻害剤 という言葉に耳覚えのある方は少ないことでしょう。日常生活のなかでいきなり聞いても何に使用するのか、ヒト用なのか植物用かペット用か検討がつきません。
実は今、ガン治療の希望の光としてにわかに注目を浴びていいるお薬なのです。どのくらい革新的なものなのでしょうか。
流行?安全?免疫チェックポイント阻害剤
ガン治療=副作用がつらいは過去になる?
ご自身もご家族や周囲の皆さんもいたって健康な生活を送っている間は、最新の医療やガン治療情報に関心を向ける方はかえって珍しいことでしょう。しかし、ガンはいつどなたが発症してもおかしくない国民病です。
皆さんがよくイメージされる抗ガン剤といえば、とにかく副作用がつらくて吐き気に苦しんだり髪の毛が抜け落ちたり…といったところでしょうか。抗ガン剤の副作用のために治療を一時中断することもあります。免疫チェックポイント阻害剤は、自己免疫がガン細胞を攻撃するのを助けてくれます。
これはとても革新的なことで、今までありそうでなかったのです。従来の抗ガン剤は、ガン細胞の分裂や増殖を抑えつつ、正常な細胞まで攻撃するといういわば少々不器用な薬でした。もちろん、免疫チェックポイント阻害剤もパーフェクトではありません。
量産化が実現しておらず非常に高価であり、緩やかな回復になるので長期の投与が必要な点も不安視されています。家庭の経済状況によって受けられる医療に格差が生じるのは今に始まったことではありませんが、今後はそういったことがますます多くなるのかもしれません。
ガン治療の救世主?
免疫チェックポイント阻害剤のメカニズムをもう少し詳しくみていきましょう。ヒトのからだには免疫機能が備わっています。体内にウイルスや細菌などが侵入すると、この機能がはたらいて排除しようと頑張ってくれています。
たとえば、全く同じ睡眠や食事の生活をしていて風邪のウイルスが体内に入ったとしても、発症する人としない人が出てくるのは免疫機能つまり体力の差です。ガンの原因も同様です。
ガン細胞を排除しきれずに発症すると、細胞の表面に「PD-L1」というやっかいで強い物質を出して、免疫細胞の表面にある「PD-1」という物質にくっついて邪魔をします。悪に染まるのがあっという間なのは体内でも同じです。
免疫細胞が休眠状態になってしまい、ガン細胞は楽にどんどん増殖していきます。このPD-1とPD-L1が結合してしまうのを防ぐのが免疫チェックポイント阻害剤なのです。
何のガンにOKなのか
現在のところ、全てのガンに効果があると承認されてはいません。日本で使用できる免疫チェックポイント阻害剤は2種類あります。
一つは、PD-1に結合する薬で「ニボルマブ製剤」とよばれる薬です。本年2016年から使用できるようになっています。悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ=皮ふガン)と、切除可能な一部の肺ガンに適用されています。
二つめは、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)に結合するタイプの免疫チェックポイント阻害剤です。こちらは悪性黒色腫のみに適用されています。
そのほか、現段階で治験(薬の効果を健康な人のアルバイトさんなどで確かめる試験)が行われているのは、悪性リンパ腫、肝臓ガン、膀胱ガン、腎ガンなどです。近い将来に適用される見込みがあります。
日本人に増えている胃ガンや大腸ガン、乳ガンにも使用できるようになると働き盛りの家族を失うという不幸を減らすことができるようになります。
さらに、価格を従来の抗ガン剤と同レベルまで抑える努力も必要です。長期の投与で入院期間が長引く恐れもあり、初期のガンだからさっさと従来の抗ガン剤で治療して治したいという患者さんもいらっしゃることでしょう。いずれにせよ、選択肢が増えることは歓迎すべきではないでしょうか。
まとめ
流行?安全?免疫チェックポイント阻害剤
ガン治療=副作用がつらいは過去になる?
ガン治療の救世主?
何のガンにOKなのか