皆さんは 脊髄腫瘍 と聞いてどのようなイメージが浮かびますか。腫瘍というとまずはガンを思い起こす方が多いことでしょう。脊髄となると背骨がものすごく痛むのだろうかと不安になるかもしれませんが、もう少し複雑で不明な点の多い病気です。
脊髄腫瘍って悪性のガンのこと?
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原因はケガ?
脊髄腫瘍とは、脊髄そのものに発生した腫瘍、脊椎や脊椎管内に発生した腫瘍のことです。腫瘍の発生部位によって、髄内腫瘍、硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍の三つに分類されます。原因は不明で、組織の異常な増殖によるということ以上の解明は進んでいません。
症状のあらわれ方は、腫瘍の発生部位や発育速度により異なります。腫瘍の発育は個人差や年齢差がありますが、通常はゆっくりめです。若年のほうが発育が早いのはお察しの通りです。
偶然にもほかの病気の画像診断によって腫瘍が小さく無症状のときに見つかるケースもありますが、多くは腫瘍が大きくなって自覚症状が出てから病院へ向かい発見されます。
初期症状としてどの部位に発生しても疼痛が出ることが多いのですが、これだけで病院へ行く気になる方は少数派でしょう。徐々に腫瘍が増大すると排尿障害や運動麻痺を伴うようになります。
麻痺症状が急激に悪化することはありませんが、たとえば物の下敷きになったり、派手に転倒したりなど大きな外力がプラスされると、それ以前は気づいていなかった症状が前面に出てくることがあります。
検査と診断
早期発見にはMRI検査が最も適しています。MRIは痛みがなく薬の注射が不要ですが、患者さんによっては腫瘍と区別するためにガドリニウムという薬剤を静脈内に少量投与することがあります。
X線検査では、骨の変化を確認します。椎体の見柱様変形、椎弓の菲薄化(ひはくか。薄くなること)、椎弓間(ついきゅうかん)距離の拡大がみられることがあります。
骨の変化が確認できるのは長い年月が経過していることが多いので、そのまま手術計画を立てるためにCT検査や脊髄腔造影検査を受けることもあるでしょう。腫瘍が発見されたらできる限り早めに入院して手術を受けるべきです。
もう少し我慢できる、仕事に支障が出るなどと先延ばしにすることは良い選択ではありません。どうしても手術を受けたくなくてドクターショッピングをしても原因が解明されていないのですから無駄な骨折り損です。
病気とわかって急に気力を失くしたりせず、前向きな気持ちで病院を信頼してください。
治療は手術しかない?
現在のところ、薬物による内科的治療は効果が認められていません。外科的手術によって腫瘍を摘出し再発を予防します。脊髄腫瘍の大部分は良性ですから、手術が成功すれば治療はほぼ完了です。ただし一部に悪性のものがあるケースもあります。
この場合は神経組織の機能を損なわずに腫瘍を全摘出することがむずかしくなりますので、放射線治療や化学療法が追加されます。したがってご自身がなるべく辛い思いをしなくて済むように、少しでも体調の異変を感じたら整形外科または脳神経外科を受診してください。
脊髄腫瘍摘出の手術は危険性が高く、地域の限られた病院でしか手術が行われていないケースが多いので、大きな病院を紹介してもらえます。医師から十分な説明を受けることになるかと思いますが、術後の神経合併症の可能性や腫瘍残存のリスクもあります。
手術が成功して1年くらいは「大丈夫かな」と心配しながら過ごしていても、2年3年と何事もなく生活しているうちに心に油断が出てくることもあるでしょう。
一度、腫瘍を摘出する手術を受けたら天寿を全うするまで1年に1度、たとえ病院から検査のお知らせ葉書が届かなくとも病院へ足を運ぶくらいの慎重さがあっても良いのではないでしょうか。
まとめ
脊髄腫瘍って悪性のガンのこと?
原因はケガ?
検査と診断
治療は手術しかない?