線維筋痛症という疾患を聞いたことがあるでしょうか。全身の広範囲にわたる激しい痛みを伴う疾患であり、些細な刺激でも強い痛みを訴えます。外傷や精神的ストレスなど、ふとしたキッカケから発症しうるこの疾患は、まだ世間ではあまり知られていません。
線維筋痛症 とは、一体どのような疾患なのでしょうか。
線維筋痛症って一体どんな病気?
線維筋痛症とは?
“痛”という文字が入っている通り、“線維筋痛症”とは全身の激しい痛みを伴う慢性疾患です。激しい痛みというのが何よりも特徴的な症状であり、全身や身体の広範囲にわたって痛みが走ります。
首から肩や、体幹、臀部、下肢とさまざまな部位に痛みがあり、人によっては頭痛や眼、口腔内の痛みなどを伴うこともあります。痛みのある部位や強さに個人差はありますが、その時々で全身のさまざまな部位の痛みを訴えます。
症状が重度となると、痛みの感受性が高まり触れたり、こすれたりする程度の軽微な刺激でも激痛を生じます。
また、天候の変化や温度・湿度の変化によって痛みの強さが変わることも特徴です。その他にも疲労やストレスによる痛みの度合いの変化があったり、その時々で痛みのある部位が変化したりします。
痛みによる睡眠不足や日常生活の不満が、疲労やストレスとなってさらに痛みを増強させるという悪循環に陥ることもあります。
痛みやそれによる睡眠障害、疲労感以外にも、抑うつ感や疲労感、過敏性腸症候群、便秘、腹痛、下痢といった症状も線維筋痛症の患者によくみとめられています。
その他には、手足のこわばりやしびれ、ドライアイ、ドライマウス、口内炎、顎関節症、動悸、体温調節異常などの症状も報告されています。
線維筋痛症の診断
線維筋痛症は、このような多様な症状をみとめる一方で、身体の各部位の痛み以外の明らかな異常所見や検査値異常を示しません。そのため、早期からの正確な診断が難しい疾患であります。
現在の診断は、広範囲にわたる身体の痛みが3カ月以上の間続いていること、そして全身にある18カ所の圧痛点を指で圧迫した際に11カ所以上に痛みを訴えること、を基準としています。
また、鑑別疾患として関節リウマチや全身性エリテマトーデス、変形性関節症、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛症などの疾患の可能性を除外していく必要があります。
線維筋痛症の原因
線維筋痛症の原因は、まだ完全には解明されていません。多くの他疾患と同様に、遺伝的素因も関係していると考えられていますが、それだけが発症の決め手となるわけではありません。
線維筋痛症では、筋肉や関節、内臓器といった疼痛が現れる部位に直接、異常がみとめられるわけではありません。疼痛の情報を処理する脳で問題が起こっていることにより生じる神経性疼痛が線維筋痛症のメカニズムであると考えられます。
現在では、発症する素因と、その発症に至るトリガーとなる刺激が相まって、発症に至る可能性が注目されています。つまり、何らかの刺激によって、脳の疼痛感覚を抑制する機能に異常が生じ、疼痛への感受性が高まってしまうということです。
発症の引き金となるトリガーは、外的な要因と内的な要因に分かれると考えられています。外的な要因としては、外傷や外科手術、感染症などが挙げられます。内的要因は精神的、心理的ストレスのことであり、生活環境や人間関係などのストレスがトリガーとなるとされています。
現在、国内には約200万人の線維筋痛症患者がいるのではないかと言われています。有病率の男女比をみると、日本国内では1:5、欧米では1:8~9と女性に多い疾患であることが知られています。
また、若年者に発症することは少なく、年齢とともに有病率が増加していきます。発症のピークは50~60代と中高年に発症することが多い疾患です。
まとめ
線維筋痛症って一体どんな病気?
線維筋痛症とは?
線維筋痛症の診断
線維筋痛症の原因