腰痛は、痛みの発症から4週間以内を急性腰痛、三か月以上持続すると慢性腰痛と分類されます。急性腰痛・慢性腰痛ともに薬物治療はとても有用ですが、急性腰痛と慢性腰痛では治療に使用する薬は少し違ってきます。
ここでは、 腰痛 に使用される 薬 の種類を詳しい作用機序と共にご紹介します。
腰痛治療に使われる薬
アセトアミノフェン・非ステロイド性抗炎症薬
急性腰痛・慢性腰痛ともに、第一選択薬としてはアセトアミノフェンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われることが多いです。アセトアミノフェン・NSAIDsは、体内に吸収されるとシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害します。
シクロオキシゲナーゼを阻害することで、プロスタグランジンという物質の産生を阻害します。このプロスタグランジンの産生を阻害することにより治療効果、すなわち鎮痛効果を発揮します。
しかしながらプロスタグランジンは、胃の表面では粘膜を保護するために必要な物質ですNSAIDsで高頻度に見られる副作用としては食欲不振、悪心、消化不良、腹痛、胃痛などですが、これはNSAIDsによる胃のプロスタグランジンの産生阻害が関係しています。
筋弛緩薬
急性腰痛の第二選択薬として使用されます。筋弛緩薬は筋肉の過度な緊張を緩和することで痛みに対する効果が期待できます。日本で急性腰痛によく使用される中枢性筋弛緩薬は、脊髄、脳幹におけるシナプス反射を阻害することで筋弛緩作用が現れると考えられています。
副作用は、眠気、ふらつき、めまい、頭痛などの精神神経系症状と悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状がみられます。
また、筋肉の緊張を緩和するということはすなわち力が入りにくいということです。座った状態から立ち上がるときなどの急に脱力して転倒したりすることもあるので注意が必要です。また、慢性腰痛にも使用されることがあります。
抗不安薬
慢性腰痛の第二選択薬として使用されます。脳内のベンゾジアセピン受容体に作用することで、GABAA受容体が活性化され、Cl-チャンネルが開き、Cl-が細胞内に移行し、過分極になることから、神経細胞の鎮静に働きます。
大脳辺縁系の神経活動を抑制することで、抗不安、鎮静の効果をもたらします。作用時間の長短、作用強度により複数の薬がありますが、ほとんどすべての薬剤について、ふらつき、眠気の副作用が見られます。
さらには高頻度で口渇・便秘・尿閉なども現れるので注意が必要です。依存性も疑われます。したがって抗不安薬を服用する際には、少量・頓用から開始し、症状を確認しながら少しずつ増やしていくようにします。
抗うつ薬
慢性腰痛ではうつ病を合併していることも多く、抗うつ薬が著効することもよくあります。抗うつ薬は、シナプスでのセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンのトランスポーターの再取り込み阻害によって効果が現れます。
抗うつ薬は効果の発現まで時間がかかることが多く、少なくとも2~4週間は服用し続けないとうつ症状の改善は見られません。途中でやめることなく、とりあえず4週間は服用し続けることが大事です。便秘・口渇などの副作用が高頻度に見られます。
また、うつ病を発症している場合には、衝動的に自殺を図る場合や薬物を乱用する危険性もあるので、過量服用(もしくは大量服用)に常に気を付けないといけません。過量服用の可能性がある場合は、致死量以下の薬剤を使用することとなります。
オピオイド鎮痛薬
NSAIDsやアセトアミノフェンで鎮痛治療に難渋する例では、オピオイド鎮痛薬が使用される場合もあります。平たくいえば、麻薬です。神経系のオピオイド受容体に作用することで強力な鎮痛効果を発揮します。
元々はがん性疼痛の管理に使用されていましたが、最近はがんではない疼痛にも使用されるようになっています。オピオイド受容体にはμ、δ、κ(ミュー、デルタ、カッパー)などのタイプがありますが、鎮痛に関与するのはμ、次にκ受容体です。
鎮痛薬としては非常に強力ですが、長期使用により便秘などの副作用が高頻度に見られます。また乱用や依存の問題もあるため、定期的な痛みの評価を行い、漫然と使用することなくできるだけ短期で終了するようにしなければなりません。また、麻薬に属する場合には、取り扱いも非常に厳格です。
まとめ
腰痛治療に使われる薬
アセトアミノフェン・非ステロイド性抗炎症薬
筋弛緩薬
抗不安薬
抗うつ薬
オピオイド鎮痛薬