前距腓靭帯 (ぜんきょひじんたい)とは、あまり耳慣れない言葉ですが、実はとても身近で重要な役割を占めている靭帯です。ここを損傷することを通常、捻挫(ねんざ)とも言います。
捻挫、つまり前距腓靭帯損傷(ぜんきょひじんたいそんしょう)における症状と治療についてご案内します。
前距腓靭帯損傷の受傷具合における治療法
前距腓靭帯はどこにある?
足首の外側にある靭帯のうち最も前にあり、足首関節のうちの距骨(きょこつ)が前にずれないように、腓骨(ひこつ)と距骨をつないでいます。前距腓靭帯と対になって後方で腓骨と距骨をつないでいる靭帯を後距腓靭帯(こうきょひじんたい)と言います。
足首関節は、ひざから下を通る腓骨と、距骨や踵骨(しょうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)などの小さな骨が、それぞれ太い靭帯によってつながれ、人間の身体の全体重を支えながら複雑な動きに対応しています。
足首は俊敏な動きを強いられることの多い関節です。急激な体重移動や外部からの衝撃を受けることも少なくありません。そのためささいなことで足首関節の可動域を超え、靭帯を損傷してしまうことがあります。
前距腓靭帯損傷とはどんなケガ?
足首の損傷のうち、もっとも多いのが足首を内側にひねる形で受傷してしまうケースです。
一般的には捻挫(ねんざ)とも呼ばれ、足首の外側の靭帯、つまり前距腓靭帯が伸びきったり、切れたりします。前距腓靭帯損傷(ぜんきょひじんたいそんしょう)とも言います。くるぶしの辺りが内出血をし、みるみる腫れあがり、歩行困難をまねくこともあります。
症状の程度による治療のちがい
前距腓靭帯損傷と診断された場合の治療の仕方は、その受傷状況、症状の程度に応じて変わってきます。症状の程度は1度、2度、3度と3つの段階に区分できます。
軽症の場合をⅠ度と診断します。この診断は、患部に腫れはなく、患部を抑えることによって痛みをともなう程度の症状である場合に下されます。すなわち靭帯が伸びた状態であると言えます。
日常的に大きな負担はないために、この場合の治療法は湿布やサポーターによる患部固定などの保存療法が行われます。
中程度の受傷をⅡ度と診断します。外観的に内出血と腫れが認められます。前距腓靭帯が部分的に切れている状態です。歩けなくなるほどではないにせよ、常時痛みを感じるので、日常生活には不便を生じます。Ⅱ度と診断された場合にはギプス固定により切れた靭帯の復旧をうながします。
通常3週間ほどのギプス固定のあと、サポーターやテーピングなどで保護固定しながら、徐々に筋力をつけ、前距腓靭帯から足首全般にわたる機能回復のためのリハビリを行います。
Ⅲ度(重症)の場合の治療法
痛みが激しく歩行困難である場合、靭帯が完全に断裂している可能性があります。このような段階での受傷をⅢ度と診断します。Ⅲ度と診断された場合には、ギプス固定による保存療法と靭帯の縫合手術という方法から、年齢や健康状態、生活背景を考慮したうえで治療法が選択されます。
ギプス固定と松葉杖の併用を3週間ののち、ウォーキングブーツタイプの装具を2~3ヶ月装着して長いリハビリに努めます。適切な保護固定にじっくりと取り組めるのであれば、手術せずとも靭帯は復旧していきます。
手術を選択される方は、復帰を急ぐ方、靭帯の確実な復旧をのぞむ方、スポーツ選手などに多くいます。靭帯の縫合手術は、大掛かりなものでなく局所麻酔の比較的軽い手術となります。手術の後はギプス固定を3週間、装具による保護を2ヶ月ほどと、保存療法と同じ経過をたどります。
いずれにせよギプス固定により筋力はいちじるしく低下しています。また靭帯損傷、捻挫は再発しやすい傾向にあります。慎重で入念なリハビリが、再発を防ぐうえでも最も効果的な治療法とも言えます。
まとめ
前距腓靭帯損傷の受傷具合における治療法
前距腓靭帯はどこにある?
前距腓靭帯損傷とはどんなケガ?
症状の程度による治療のちがい
Ⅲ度(重症)の場合の治療法