頭痛 を経験したことのない人は、ほとんどいないことでしょう。成人の約90%が、1年間に最低1度は頭痛を経験しているという報告があります。また、日常生活に支障を来す頭痛は約40%の人が経験したことがあるとも報告されています。
今日はそんなありふれた病気の一つである「頭痛」の 原因 について、少し深く掘り下げて考えてみたいと思います。
頭痛の原因:適切な対処は正しい理解から
なぜ頭痛を甘く見てはいけないのか
ほとんどの頭痛は、良性(放置しておいても大事に至らない)ですが、時には脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、髄膜炎などの重篤な疾患に関連した症状でもあります。頭痛は原因が多岐にわたり、時に重大な疾患のシグナルでもあるのですが、ありふれた病気のために軽く見られてしまいがちです。
放置しておいてよい頭痛なのか?医師に相談すべき頭痛なのか?適切に判断するためには、まず頭痛の原因を正しく理解することが必要です。
頭痛の様々な痛みがどのように発生するかについて、頭痛の発生する部位と発生の機序について詳しく見ていきましょう。
頭痛を感じる仕組みとは
一言で「頭痛」と言っても、痛みの感じ方は様々であることを経験されている方も多いでしょう。たとえば、こめかみがキリキリと痛むとか、目の奥が圧迫性に痛むとか、心臓の拍動に併せてズキンズキンと痛むとか、様々ありますね。どうして、このように痛み方に違いが生じるのでしょうか。
それは、頭痛が生じる頭部の部位と痛みの原因に多様性があるからです。頭痛の生じる原因には大きく分けて次の6つのパターンが知られています(ハリソン内科学の一部を判り易く改変)。
(1) 頭蓋骨(ずがいこつ)の内外の動脈(血管)が膨張したり、引っ張られたり、広がったりするため
(2) 頭蓋骨内の比較が的大きな静脈(血管)とその周囲の膜(硬膜)が引っ張られたり、圧迫されたりするため
(3) 脳脊髄神経が引っ張られたり、圧迫されたり、炎症を起こしたりするため
(4) 頭部や頸部(首周辺)の筋肉のけいれん、炎症、外傷のため
(5) 髄膜(脳を覆っている膜)の刺激や頭蓋内圧(頭蓋骨の中の圧力)が上がるため
(6) その他の脳幹(脳と脊髄をつなぐ部分)構造の活性化のため
頭痛が発生する部分は、脳や顔面を取り巻く血管や神経、筋肉であり、脳そのものに痛みが発生するわけではありません(実は、脳自体は痛みを感じることはないのです)。痛みはこれらの血管や神経、筋肉が引っ張られたり、圧迫されたり、拡張したりすることで生じるのです。
つまり、頭痛とは首から上の頭蓋骨の内や外にあって脳や顔面を取り巻いている血管や神経、筋肉が物理的に刺激されることで生じた痛みということです。
頭痛を感じたら行うべき重要な観察と行動
頭痛は重大な疾患のシグナルでもあることを先に述べました。重大なシグナルなのか良性の痛みなのかを鑑別するためには、痛みをしっかり観察する必要があります。これらの観察事項は、ときに頭痛の原因を正確に診断するために役に立つことがあります。
痛みは主観を伴います(人によって違う)ので、自分以外の方(ご家族など)の頭痛については、正確に知ることが難しいのですが、なるべく多くの情報を聞き出して痛みの性質を把握する必要があります。
まずは、頭痛の痛み方(痛みのつよさ、ズキズキ、キリキリなど)、部位(片側、左右両方、頭の表面に近いのか深部なのか、こめかみなど)、持続時間(数時間、短時間、長時間など)、時間経過(時間とともに痛くなる、痛くなったり治まったりを繰り返すなど)などを観察しましょう。
次に頭痛が起きたり、悪くなったり、軽くなる要因があるかどうかを観察しましょう。たとえば、ある臭いを嗅ぐときまって頭痛が起きるとか、頭痛の最中に強い光をみると頭痛がひどくなるとか、ある姿勢をとると頭痛が軽くなるなどです。
肩こりや長時間のパソコン作業など身体ストレスによって起きる緊張型頭痛の多くは、きつく締め付けられるような、深部の疼くような痛みと表現されたり、短時間の鋭い(アイスピックで突かれるような)痛みと表現されることがあります。この場合は、良性の頭痛であることが大半です。
一方、今までに経験したことのないような強い痛みを感じた場合は、至急病院を受診されることをお勧めいたします。また、頭部だけではなく顔面も含めて、いままでに感じたことのない部分に痛みを感じたりする場合も医師への相談が必要です。
これ以外に頭痛が習慣化、長期化または慢性化している方も、医師への相談をお勧めいたします。特に市販薬を常時服用されている方は、長期間の薬剤投与の身体への影響も併せて考慮する必要がありますので、その市販薬を持って受診しましょう。
頭痛の原因と対処方法について説明いたしました。頭痛だけではなく、ご自身の身体の変化は、大きな疾患のシグナルの可能性があります。「今日は、いつもと違うな」と感じたら、一歩踏み込んで、その症状を詳しく観察してみましょう。そして、その症状が強いものであったり、長く続いたり、頻繁に発生するようになった場合は、躊躇なく医師に相談しましょう。
まとめ
頭痛の原因:適切な対処は正しい理解から
なぜ頭痛を甘く見てはいけないのか
頭痛を感じる仕組みとは
頭痛を感じたら行うべき重要な観察と行動