みなさんは、お顔が腫れ上がったり歯が痛いときには何科を受診しようと考えるでしょうか。歯医者さんへ行こうとする方が多いのではないでしょうか。
しかし、その症状が 上顎洞癌 である場合、歯医者さんでは治せません。歯医者さんが適切な診療先をアドバイスしてくださるかはわかりませんが、耳鼻咽喉科を訪ねてみてください。
上顎洞癌ってどこにできるの?
アゴではなく、ハナのガン
上顎洞(じょうがくどう)とは、鼻の横~奥へと広がっている大きな空洞のことです。上顎洞癌は、極めて稀なガンですが早期発見できれば十分に治療は可能ですので、絶望することはありません。
原因は現在のところはっきりとは解明されていませんが、蓄膿症が原因の一つとされています。ほかに、ヒトパピローマウイルスへの感染、クローム(金属)との接触もあげられています。
ほかのガンとは異なり、食べ過ぎや喫煙などの生活習慣は直接的には無関係ですが、不健康な生活習慣は免疫力を低下させますから間接的な原因にはなりうるでしょう。
男性のほうが女性よりも2倍もかかりやすいのは、先天的な免疫力が弱いためと考えられています。日本国内での患者数はおおよそ1,000名ということからも珍しいことがわかります。
しかし、年間手術件数が少ないからといって不安になることはありません。手術件数の多い病院を紹介してもらえば大丈夫です。
風邪のような症状
初期には、ほかのガンと同じく無症状です。少し進行して腫瘍が大きくなってくると鼻詰まり、顔面の腫れ、鼻汁(血や膿が混じり悪臭を放つ)、眼球が飛び出してくる、歯が痛む、歯肉が腫れるなどの症状がみられるようになります。
ここまでの症状が出てくれば、いくら楽観的な方でも病院へ行こうと考えなくてはからだが持ちません。症状には個人差がありますし、もともと蓄膿症気味の方は鼻汁や鼻詰まり、涙目になりやすくなっても鼻炎や花粉症かと放置するのも無理はありません。
進行がゆっくりで悪性度が低い上、転移の可能性もほとんどないやさしいガンですが、かえってそれが厄介でもあります。初期の段階で病院へ行くケースは少なく、発見されて診断が確定したときはかなり進行した状態です。
進行がさらに進むと、複視などの視覚障害が出始めたり、腫瘍部分が大きく肥大して頬骨を突き破るほどの大きさになり、肥大した腫瘍から出血を起こします。この出血が脳の神経を圧迫し、死亡することもあります。
初期症状の特徴として一つ覚えておいていただきたいのは、鼻炎や花粉症は両方の鼻腔が詰まりますが、上顎洞癌は片方のみが詰まります。
小さなことですが、よく考えたらふつうの鼻炎ではないのではないかと気づくはずです。この違いを見逃さずにすぐに病院へ行くことができれば、医師にも褒められることでしょう。
ほかのガンとの違い
放射線治療と化学療法(抗がん剤)を併用する方法により、上顎を温存できるケースが増えています。抗がん剤というとどうしてもものすごく辛そうなイメージを抱きがちですが、上顎洞癌は抗がん剤や放射線が効きやすいので希望を持って頑張りましょう。
患者さんの50~80%はこの併用治療で完治しています。これ以上のレベルまで悪化している場合は、眼球や上顎を部分的あるいは全部を摘出する(全摘)外科療法が行われます。こうなると転移が少ない云々の話どころではなくなります。
外見の変化に直結する問題ですから、内臓のガンのほうがはるかに希望が持てると思う方もいらっしゃることでしょう。そのような最悪の事態を避けるためにも、鼻炎の段階で一度病院へ行くべきです。
鼻炎や花粉症、蓄膿症の方は1年に一度はお鼻の健康状態をチェックするつもりで耳鼻咽喉科を受診すると決めておくのも大げさなことではありません。
まとめ
上顎洞癌ってどこにできるの?
アゴではなく、ハナのガン
風邪のような症状
ほかのガンとの違い