五十歳前後で自然発症するから五十肩、という曖昧な表現にくくられた疾患について、もう少し掘り下げて考えてみました。
自然に痛みが発生して放っておいても治ると言われる 五十肩 ですが、肩の痛みにも様々あり疾患に応じた適切な治療というものが必要になります。
謎多き五十肩、その名の由来と治療法
五十肩の由来と四十肩
さかのぼれば江戸時代から、その年齢に達したころに肩の痛みを訴える方が多かったそうです。ほとんどの患者さんが五十歳から発症するために五十肩と呼ばれるようになりました。
もちろん六十歳になってから発症する方もいらっしゃいますし、最近では四十代で痛みを訴える方もずいぶんと増えています。四十代の方が発症すると四十肩と呼ばれます。四十肩という名称もすっかり定着していますが、五十肩と全く同じで、発症年齢によって呼び名が変わったにすぎません。
そうかといって六十代での肩の痛みを六十肩とは言うわけではありません。六十代での発症人口が少ないことと、この年齢に達すると身体のあちこちに不具合を訴えることになるので、肩の痛みだけを特別視しないためと思われます。
五十肩の保険病名
整形外科を受診すると、肩関節周囲炎という診断をされます。これは五十肩という病名が通称であり、日本では保険病名として認められていないためです。国際的には凍結肩とよばれていますが、こちらも保険病名ではありません。
このため五十肩とは肩関節周囲炎である、とお思いになる方が多くいらっしゃいます。けれども本来の意味での五十肩とは、それら肩関節周囲の疾患を除いた、関節包そのものに何らかの問題が生じている場合を指すのです。
五十肩とは、肩関節周囲炎のうちの、原因のはっきりしないひとつの疾患、と思っても差し支えないかも知れません。
類似した疾患
肩の腱板の変性により石灰が沈着し、その刺激によって炎症が起こる疾患を石灰沈着性腱板炎と言います。
激しい肩の痛みや、腕が上がらなくなるなどの症状は五十肩と全く同じですので、混同されがちです。レントゲン検査によって診断できますし、治療方法も五十肩とほぼ同じで消炎鎮痛剤や温湿布などが施されます。また石灰を吸い出す治療を施すこともあります。
急に肩を動かしたときに激しい痛みに襲われた、といった場合には腱板断裂の可能性もあります。肩を強打した場合や重い荷物を持った場合にも同じ症状を引き起こすことがあります。
断裂した腱板は元には戻りませんが、薬物療法やリハビリにより痛みを緩和して、日常生活を支障なく過ごせるようになることもあります。また、症状が重い場合には、腱板の修復手術を施すことになります。
五十肩の症状
一般的な症状としては、初めのうちに肩に違和感を覚え、やがて痛みを伴うようになります。徐々に、腕を動かしたり引っ張ったりすることに抵抗を感じ、そのうちに激しい痛みが腕の可動範囲を狭めていきます。
こうして「腕が上がらなくなった」などの症状を訴えることになるのです。安静時にも痛んだりしますが、特に腕を上げようとした時、あるいは腕を後ろに回そうとした時に激しい痛みを感じます。痛みの度合いや発症の期間は個人差が大きく、左右どちらか痛む場合もあれば両肩が痛む場合もあります。
肩に違和感を覚えてから、「急性期」と呼ばれる傷みの激しい期間が2週間~2ヶ月ほど続きます。その後、痛みは緩和するものの思うように肩を動かすことの出来ない「慢性期」と呼ばれる期間が3ヶ月~1年ほど続き、やがて痛みは自然消滅します。
これが一般的に五十肩と呼ばれる肩の疾患の症状の経緯です。
五十肩の治療法
自然消滅していく痛みですので、痛みのある時期をどのように乗り切るかということが、すなわち治療ということになります。ある程度の痛みであればご自宅でのエクササイズ等により緩和されますので、病院を受診されない方も少なくはありません。
ただし痛みが強く長引いている場合には、受診されることを強くお勧めします。病院では痛みを緩和させるための消炎鎮痛剤や局所麻酔剤が投与されます。またヒアルロン酸の注入によって炎症を和らげたりします。
一般的な炎症の場合には冷やすことにより炎症を抑えますが、五十肩の場合には冷やすことは禁物ですので、温湿布やマイクロ波を使った温熱療法により温めて治療していくことになります。
痛みが治まっても、腕の可動範囲に支障のある場合には理学療法を続けることお勧めします。また、ご自宅でもリハビリや運動療法を積極的に行ってください。庇って動かさないでいると、関節が固まってしまいます。出来るだけ動かし続けましょう。
まとめ
謎多き五十肩、その名の由来と治療
五十肩の由来と四十肩
五十肩の保険病名
類似した疾患
五十肩の症状
五十肩の治療法