股関節痛 を引き起こす疾患の1つとして、変形性股関節症という疾患があります。変形性股関節症は、進行すると股関節の動く範囲が低下し、痛みによって歩くのも難しくなります。
この変形性股関節症はどのような病態、症状を示すのでしょうか。
股関節痛の原因、変形性股関節症とは?
股関節の構造
股関節は体幹と下肢をつないでいる重要な関節です。この股関節は、膝関節や足関節、肘関節などと比べて豊富な運動方向を持っており、前後方向(屈曲・伸展)、左右方向(外転・内転)、捻り(外旋・内旋)といった3つの方向への運動が可能です。
この自由な運動を実現するために、股関節は骨端が半球状に盛り上がった関節面と、それがはまるようなお椀型の凹みを持った関節面が合わさった、球関節(臼関節)という構造をしています。
股関節では、太もも側の大腿骨が半球状の大腿骨頭という先端を形成しており、骨盤側の寛骨臼という凹みにスッポリとはまり込むことで、関節を形成しています。正常な股関節では、この寛骨臼が大腿骨頭の約4/5を包み込んでおり、これによって関節の安定性を生み出しています。
また、股関節は体幹と下肢をつなぐ関節として、上半身の重みを支える役割も担っています。この上半身の荷重を受けているのも、大腿骨頭と寛骨臼からなる関節面になります。
変形性股関節症の病態
股関節には、その荷重を支える上での衝撃を吸収したり、関節の動きを滑らかにしたりする関節軟骨が存在しています。変形性股関節症は、先天性もしくは後天性の疾患や外傷、加齢変化などによってこの関節軟骨が摩耗し、すり減ってしまった状態を指します。
変形性股関節症の初期では、この関節軟骨がすり減り始め、関節の隙間である関節裂隙が徐々に狭くなり始めます。
さらに、病態が進行することで関節裂隙はさらに狭くなっていき、大腿骨頭と寛骨臼が直接衝突してしまう部分も現れ始めます。この骨と骨の隙間がなくなることで、股関節は運動性を失ってしまいます。
また、骨のう胞という骨に穴が空いた状態や、骨棘という骨の余分な出っ張りが出現していき、痛みや運動制限が強くなっていきます。
変形性股関節症の原因
変形性股関節症は、元となる疾患が明らかでない一次性股関節症と呼ばれるものと、何らかの疾患に続いて起こる二次性股関節症と呼ばれるものがあります。
日本では、一次性股関節症は15%程度とされており、その多くが二次性股関節症です。一方で、欧米では大半が一次性股関節症であるとされています。
一次性股関節症は加齢による変化や関節軟骨内のプロテオグリカンやコラゲンの質的変化、遺伝的要素やホルモンの影響などが原因として考えられていますが、その詳細は明らかとなっていません。
二次性股関節症を引き起こしうる疾患としては発育性股関節形成不全や臼蓋形成不全などの先天性疾患や、後天的な化膿性股関節炎、大腿骨頭すべり症、大腿骨頭壊死症、さらには大腿骨頸部骨折や股関節脱臼などの外傷が挙げられます。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症の主な症状は、関節軟骨の摩耗による股関節の痛みです。立った姿勢のように股関節に体重がかかることで関節裂隙が狭くなるため、変形性股関節症の初期では特に、立ち上がり動作時や歩行時、階段昇降時などに痛みが強くなります。
病態が進行するにつれて、痛みが持続するようになったり、夜間痛に悩まされたりするようになります。
関節裂隙が狭くなることや骨棘の出現に伴って、股関節の可動範囲も狭くなります。また、慢性的な股関節の痛みが股関節周囲の筋肉を硬くすることで、さらに股関節の動きが悪くなっていきます。股関節を大きく開いたり、深く曲げたりすることが難しくなるようになります。
さらに、関節裂隙が狭くなり、関節軟骨がすり減ると、脚の長さも左右で差が出てきます。この脚長差や痛みのために、歩き方も不自然になっていきます。
まとめ
股関節痛の原因、変形性股関節症とは?
股関節の構造
変形性股関節症の病態
変形性股関節症の原因
変形性股関節症の症状