頭痛は、それだけでは仕事も家事も休むことができません。そのため、日常生活に支障を来さないために、早めに薬を服用して対処することは少なくありません。
痛みから逃れるために服薬量を安易に増やしてしまうケースもあります。そうしているうちに、薬を飲んでも 頭痛 が 治らない 、頭痛に毎日悩まされるという訴えをする患者さんが増えています。
このような場合、薬物乱用頭痛が疑われます。ひどくなると日常生活や社会生活にも支障を来し、うつ病などの精神疾患につながることもあります。
治らない頭痛、薬の飲み過ぎで起こる薬物乱用頭痛
薬物乱用頭痛とは
薬物乱用頭痛(以下MOH medication overuse headache)は急性期治療薬を過剰に頻回使用することにより起こる二次性頭痛です。
普段、頭痛に対して鎮痛剤を服用していて、薬を飲んでも頭痛が治まらない、頭痛に頻度が増えたという訴えの患者さんはこのMOHが疑われます。
実際に服用している薬が原因で頭痛が起こっているのに気付かずに、頭痛が治まらないと処方された薬を過剰に服用してしまったり、また市販薬を飲み過ぎてしまったりしてさらに悪化します。
どのような頭痛が薬物乱用頭痛に陥りやすいのか
MOHに陥りやすい頭痛は中度から重度の片頭痛です。このあたりになると、日常生活や社会生活に支障を来し、生活の質が著しく低下します。そのために、痛みから逃れるため、また痛みへの恐怖から早め早めに薬を服用する癖がついてしまいます。
頭痛に悩む人は日本では15歳以上で3人に1人と言われ、特にトリプタン製剤は安易に処方されやすいのが現状です。また、頭痛に対する鎮痛薬は、多く市販されているために、比較的に入手が簡単なことも発生要因のひとつです。
薬物乱用頭痛の病態生理
MOHは薬物の過剰摂取により、痛みに対する感受性が過敏となり、痛みの閾値が下がっている状態です。片頭痛患者もしくは緊張型頭痛患者やこの二つの混合型の患者に多く見られます。群発頭痛患者にはほとんど見られません。
また、慢性腰痛やリウマチなどの患者さんが長期に渡り大量の鎮痛薬を服用してもMOHに陥ることは極めて稀です。このことから、片頭痛や緊張性頭痛の病態自体がMOHの発生要因に関与している可能性があります。
薬物乱用頭痛の治療
MOHが疑われた場合、医療機関を受診してしっかりとした診断をうけましょう。薬剤の使用状況をしっかり把握し、頭痛の状態と照らし合わせる必要があります。MOHの治療の最終目標は、過剰に服用している薬剤を中止、または適正使用に戻すことです。
治療の第一段階は原因薬物の中止です。その次が薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療です。薬の中止後、2日~10日程度つづくのが一般的です。そして最後に予防薬の投与になります。
予防薬は、痛みの閾値を上昇させる塩酸アミトリプチリンや抗不安作用を期待する薬剤など色々考え方はありますが、暫定的に3~6か月服用して徐々に減薬して頓服薬の適正使用に戻していきます。
MOHの治療には、患者さんの疾患に対する理解が必要です。特に原因薬物を中止したときに起こる反跳頭痛に対する説明を事前にしておかなければなりません。
MOHの治療の成功率は70%程度です。治療を成功させるためには、治療計画をしっかり患者さんが理解して、患者さん自信の意識改革をすることが大切です。しかし残念ながら20~40%が再発し、治療終了後1年以内が最も再発率が高いのです。
再発率を低下させるには、丁寧な服薬指導と、本来の頭痛の根本的な解消が不可欠です。片頭痛と緊張型頭痛は生活全般の何等かのストレスにより引き起こされることが多いので、日々の生活の立て直しを行うことが大切です。
まとめ
治らない頭痛、薬の飲み過ぎで起こる薬物乱用頭痛
薬物乱用頭痛とは
薬物乱用頭痛の病態生理
薬物乱用頭痛の治療