よく「 五十肩 」や「四十肩」という疾患名は耳にします。これらは医学的には「肩関節周囲炎」と言い、同じ疾患です。この疾患ははっきり 原因 がわかることもあれば、はっきりしないものもあります。
ひどいと痛みで日常生活にも支障を来すこともあり、痛みだけではなく関節の動く範囲が徐々に狭まり「肩関節拘縮」を起こしてしまう危険性があります。
いわゆる五十肩は中高年以降に発症し、運動制限を主症状として痛みは鈍痛であることが多く、夜間痛み、睡眠に支障を来すこともあります。また、生活動作の髪結いやエプロンの紐を後ろで結んだり、洗濯ものを干したりといった、日々行う動作で痛みます。
また、安静時痛もあるため、生活の質が著しく低下してしまいます。治療は投薬治療や運動療法が中心です。場合によってはいつの間にか治ってしまうこともすくなくありません。
五十肩の原因とメカニズム
五十肩の原因
五十肩の原因は退行変性(加齢による筋力の低下と衰え)です。個人差がありますが、40~50歳にかけて筋力は衰えてきます。特に背筋群の筋力低下が顕著です。そのために拮抗筋である身体を前に倒す筋肉が優勢になり、猫背のように姿勢が丸くなりがちになります。
姿勢が丸くなることで肩が前方に突き出し、大胸筋の緊張が強くなることで肩の動きが制限されるのです。加齢からくる退行変性だけではなく、打撲などの外傷や運動不足による筋力の低下、柔軟性の低下から発症することもあります。
五十肩の症状
五十肩の代表的な症状は、①運動制限②生活動作の制限③夜間痛です。
五十肩は経過と共に症状が変化していきます。急性期は痛みが主症状で、痛むことで手を動かさなくなります(6週~9カ月)。その後著しく可動域が制限される拘縮期となります(4~6か月)。
その後、回復期でゆっくりと痛みが和らぎ、肩を動かせるようになり症状が緩解していきます(6か月~2年)。
五十肩のメカニズム
肩関節は上腕骨・肩甲骨・鎖骨の3つの骨で支えられています。腕を多く使う人間は、肩を大きく動かすために肩甲骨関節窩が小さく上腕骨頭のはまりが浅くできています。骨だけでは構造的に不安定なので関節包や発達した腱板で強度を高めています。
そのため、肩を酷使しすぎると炎症や損傷が起こりやすく痛みや可動域制限が起こりやすくなります。関節の炎症は肩峰下の滑液包や関節の周囲の筋肉までひろがることがあります。棘上筋が石灰化したり、上腕二頭筋長頭が腱鞘炎を起こしたりします。
ひどくなると関節包が癒着をおこしてしまうこともあり、状態によっては外科的な処置が必要になってくることもあります。また、続く痛みといつまで続くかわからない不安で精神的に鬱状態になることもあります。早めに対処して悪化させないことが大切です。
五十肩の対処法
五十肩は病期に合わせて対処することが大切です。急性期の疼痛の強い時期は動かすことで痛みが悪化するので、安静を心掛け、無理をしないことが大切です。炎症が強い時期なので、温めることは適しません。
徐々に回復期になったら、痛みのない範囲で動かすように心がけます。温める方が良いのか、冷たく冷やしたら良いのかは、人によって感じ方は様々なので、自分が心地よいと思える法にしましょう。
胃熱海を和らげるために投薬治療が行われます。鎮痛消炎剤は非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)がよく用いられます。痛みが強い場合には肩関節腔内に高分子ヒアルロン酸ナトリウムを注射して除痛することもあります。
慢性期に入り痛みが弱くなってきたら、肩関節の拘縮予防や可動域を広げるための運動療法を開始します。肩を温めながら少しずつ動かせる範囲を広げていきます。自宅ではアイロンやペットボトルを患肢で持って体側でゆっくり円を描くように回す振り子体操が容易にできます。
回復が思わしくない時は病院のリハビリに通院して、温熱療法、運動療法に加え超音波治療などを組み合わせると効果的です。
まとめ
五十肩の原因とメカニズム
五十肩の原因
五十肩のメカニズム
五十肩の対処法